《モンスターエンジン・西森洋一》 この人の持つお笑いのエンジンは、まさにモンスター級! その言動のすべてが「暇を持て余した神々の遊び」

モンスターエンジン・西森

白髪まじりの細っいオッサンラッパー・西森洋一。 誰にも真似できない、誰にも誇れないオンリーワンのお笑い感性。伝統芸とは真反対の道を歩き続ける東大阪の町工場出身の旋盤工・ゴッドハンド洋一。「中小企業ーーーーーーっ!!」「はい、技術で返してくださいね!!」


ナイティナイン・岡村隆史の失言騒動以来、日本のお笑い界が増々窮屈になってゆき、僕の大好きな芸人さんたちが次々と消されてゆくであろう未来を考えると、悲しすぎて夜な夜な枕を濡らす毎日。 

で、大好きなお笑い芸人の一人、モンスターエンジン・西森洋一だけは、抹殺されないように、もうこれ以上有名にならないで、限られたフィールドだけで活躍してくれることを願わずにはいられないわたくしなのです。

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三人組のお笑いトリオとしてスタート。メンバーの荒牧の脱退によりグループ名を《モンスターエンジン》として2007年にデビュー。すぐさま頭角を表し、M-1グランプリ2008、2009と、立て続けに決勝進出(結果は両年とも7位)。そしてキングオブコントにも、2009、2011と決勝進出。優勝は逃すものの一躍人気芸人となります。

さらにその人気を決定づけたのは、テレビ番組《あらびき団》で披露した、超くだらない《神々の遊び》というコント。


上半身裸で黒いスパッツを穿いたオッサン二人が、メンフィスメンフェンティスという神となって人間界でたわむれるショートコント。いつも人間に扮したメンフィス・西森メンフェンティス・大森を騙すという設定で、ネタの最後はメンフィス「私だ」と正体をばらし、メンフェンティス「お前だったのか!」「まったく気づかなかった!」と驚愕。そして最後の決め台詞が、

「暇を持て余した、神々の遊び」

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当時このネタで名前が売れたのですが、僕はやっぱりモンスターエンジンの漫才が大好きで、特に西森の独特のボケのセンス、間、喋り口調、それに呼応する大林のツッコミが心地よく、M-1優勝も時間の問題のように思っていたのです。しかし、その後のM-1に出場する漫才コンビの傾向が、しっかり練ったネタで、4分間矢継ぎ早にボケ続けるスタイルに大きく変化し、モンスターエンジンの雰囲気や佇まい、そこはかとない可笑しみで笑わせる漫才は、M-1では通用しなくなってしまったのです。


テレビ番組《はねるのトびら》終了後、次世代のお笑いを作るべく始まった《ピカルの定理》に抜擢。安定した知名度と地位を確立するかに見えたのですが、視聴率の低迷でわずか三年で終了。 その後はテレビの露出が極端に減り、その活躍を見ることも少なくなります。しかし、劇場での漫才はコンスタントに続けており、最近は、年々老けてゆく西森のオッサンキャラが際立ち、舞台に登場するだけで嬉しくなるのは僕だけでしょうか?


個々の活動も精力的に行っており、西森のピンネタ、《鉄工所ラップ》は痺れまくり。 家業の業種が精密機械部品の町工場で、そのあるあるネタをラップに昇華。とにかく一度聞いてみてください。


「中小企業ーーーーーーっ!!」


「はい、技術で返してくださいね!!」

から始まります。

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そして2017年にスタートしたYouTube・モンスターエンジン西森チャンネルは、西森ワールド全開! テレビやラジオでは到底表現できなかった西森ズムが遺憾なく発揮される、どこまでもマニアックでどこまでもくだらない最高のチャンネル! このチャンネルの動画の大半が金属加工実況。実家の鉄工所で、鉄の塊をひたすら削るのを延々と見せつけられ、あげくのはて完成したものは、絶対に使わないであろうメタルグッズ。その中でも飛びぬけてくだらない代物は、


①ジャルジャル後藤へプレゼントしたアルミ製つま楊枝入れ

つま楊枝入れ


たった一本のつま楊枝が入った異常に重たいアルミの塊(どこで使うねん!肝心のつま楊枝も研磨用の油で汚れてるし!)。


②誰もが欲しかった、カニを食べるとき用のバタフライカニスプーン

カニスプーン


通常のバタフライナイフのナイフの部分がカニスプーンになっとる奴。いつものようにアルミの塊で異常な重さ。凄まじい情熱をかけて作成したバタフライカニスプーン。 


カシャーーーン‼ 


「動くな!カニを出せ!」


「カニかぁーーーーーい!」


③柿の種ケース

柿の種


おつまみの柿の種のおかき三つ、ピーナッツ二つ収納可能なアルミの塊の異常な重さのケース。人間が作ったおかきの大きさのバラつきよりも自然のめぐみのピーナッツのバラつきのほうが大きいそうです(どうでもいいわっ!)。


そのほか趣味のゴルフのパターや愛車のAE86カローラレビンの部品など、「誰が見るねん!」と思われるような動画のオンパレード。 西森たった一人で解説しながらの動画で、後にアフレコで自分で自分をツッコむ実況を入れているのですが、これが最高に面白く、抱腹絶倒!

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そしてライフワークとして続けている《日記ライブ》

老けたオッサン西森ただ一人が舞台中央の椅子に腰かけ、毎日つけ続けている日記を淡々と読み上げるだけのライヴ。 この映像もYouTube・モンスターエンジン西森チャンネルは惜しげもなくアップしてくれているのです! 

生活空間、半径5キロ前後の日々の出来事と、劇場や地方での舞台漫才での出来事を 西森一流のボソボソトークで展開。芸人仲間やヤジりまくる観客のオッサンのエピソード、嫁、長女、長男との微笑ましくもこまっしゃくれた会話等々。これは大好評でついに書籍化。 西森さん、実は本も数冊執筆しており、書籍の販売兼サイン会を伊丹空港(何で空港やねん!)で華々しく執り行われた模様もYouTubeチャンネルでアップされております。題して、


《3人しか来なかったサイン会!》 


地獄のサイン会。あまりにも暇すぎてYouTube動画撮影開始! モンスターエンジン西森さん本人の見解では、似顔絵を描く人と間違えられていたらしいとのこと。

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相方、大林とのモンスターエンジンの漫才も年々円熟味を増し、舞台上手からだらしない笑顔でヒョロヒョロマイクに近ずく西森を見ているだけで幸せな気分になる僕は、どこか病んでいるのでしょうか? 勝手な憶測ですが、おそらく極度の人見知りであろう西森さんは、漫才中終始眼が泳いでおり、円熟味を増した今でも、その挙動不審の佇まいは絶賛継続中。芸歴14年あまりで生粋の芸人臭を発しているくせに素人臭さが未だに抜けていないことは、芸人として良いのか悪いのか?


このタイプの芸人さんは、年を重ねジジィになればなるほどにより面白くなるはず。今後は、令和のコンプライアンスをしっかり守りつつ、令和の常識人達に潰されることなく、そこそこに活躍し、長く生き延びてその独自の芸を僕たちに見せてくれることを 僕は切に望むのであります。


「中小企業ーーーーーーっ!!」


「はい、技術で返してくださいね!!」

おしまい