情熱の赤旗はためくステージで白髪の長髪を振り乱し、声を限りにロッケンロールを歌い狂う沢田研二! この尽きることのない燃える様なパッションはなんなんだ!
いや、やっぱ異常や!
若い時は勢いにまかせド直球に情熱を発露するものですが、人は年齢を重ねるごとに、テクニックに頼り誤魔化すことを覚え、それなりに分別をわきまえるもの。ほとんどの歌手は同じヒット曲でも年相応に余裕を保ちながらオシャレに歌うのですが、沢田研二ときたら……。
というわけで、先日開催された《沢田研二バースデイライブ・さいたまスーパーアリーナ》で観たジュリーの歌い狂う映像が脳裏から離れず、眠れぬ雨の夜を過ごす短髪白髪のしおれたジジィな僕なのですが、前回のブログで捉え切れなかった【何か】を吐き出したく《追記》を上げようと思った次第。
で、その【何か】を探るべくWOWOWオンデマンドの見逃し配信を再度鑑賞したのですが、
「やっぱ異常や!ほんま狂っとるでこの爺さん!」
と、思わず関西弁になるほどに沢田研二の《愛まで待てない、君しかいらない》のパッションを全身で受け取り、熱にうなされた三日三晩。意識朦朧としながら《愛まで待てない》を息を切らし走り回り歌うジュリーを観ているうちに、《愛まで待てない》で歌われている歌詞の中にその【何か】が内包されているように感じたのです。
で、その歌詞をお借りして、短髪白髪のしおれたジジィな僕が、何時ものように壮大なるこじつけを展開ようと思うのです。
《愛まで待てない》からの抜粋
ルージュもトワレも
きっかけじゃなかった
気づけばすべてを
棒にふる覚悟の
darlin’ you
馬鹿な男でいいよ
愛まで待てない
言い訳はしない
ドラマも誓いも
あとに続くから
愛まで待てない
君しかいらない
今すぐ逢えなきゃ
僕は灰になる
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75才になっても持ち続ける《初期衝動》
いまだに消えることのないザ・タイガース結成当時の、ロックンロールでライヴをしたいという《初期衝動》。
数えきれない程のヒット曲を世に送りだした全盛期の沢田研二は、《スター・ジュリー》を客観視し自己プロディースした結果、
ルージュやトワレ♪(装飾)
をその手段とします。その結果、ほとんどの人々は(一部のファンは除く)当時のジュリーは究極のナルシストだと思っていたはず。当時中学生だった僕も多少そのようなイメージを持ってはいたのですが、大ファンだった僕の母親からの情報で知ったオフの時の言動で、沢田研二は誰よりも男性性の強い人間だと思うに至ったのです。
後先考えず、その時々の《衝動》や《感情》で走り抜ける、
♪気づけばすべてを棒にふる覚悟のdarlin’ you 馬鹿な男でいいよ
の覚悟、いや性分なのでしょう。
♪愛まで待てない 言い訳はしない
のです。 ロックンロールは言葉や物語になる前の《衝動》や《感情》がすべて。そう、
♪ドラマも誓いもあとに続くから
齢を重ねるほどにその傾向が如実に現れます。今まで纏っていた《スター・ジュリー》の虚飾が次々と剥ぎとられ、剥き出しの《人間・沢田研二》が立ち現れる度に、増々魅力を感じてしまう僕なのですが、不思議なことにその都度、また新たな《スター・ジュリー》が出現してしまうのです。
《スター・ジュリー》第一形態 タイガース時代の国民的アイドル時代
《スター・ジュリー》第二形態 ソロデビュー後のスーパースター時代
《スター・ジュリー》第三形態 テレビ等のメディアから遠ざかり、地道にライヴや音楽劇を続けた潜伏時代
《スター・ジュリー》第四形態 東京ドーム《人間60年ジュリー祭り》(今、WOWOWで観れますよーーっ!7/16まで)以後の、歌手・沢田研二の全盛時代(僕が勝手に思っています)
《スター・ジュリー》第五形態 映画《土を喰らう十二ヵ月》《沢田研二バースデイライブ2023》を経た、人間・沢田研二剥き出しの時代
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このジュリー第五形態の今こそまさに、
♪愛まで待てない、君(ロックンロール)しかいらない ♪今すぐ逢えなきゃ(観客に)僕は灰になる
というわけなのです。
と、ここまで前回のブログで捉え切れなかった【何か】をグタグタと書き散らかしたのですが、やっぱり僕の洞察力、文章力では
無理だぁ!
駄目だぁ!
限界だぁ!
そうその【何か】は《沢田研二バースデイライブ2023》のライヴを観て感じないと分からないのです。 今回、僕は会場ではなくオンデマンド配信での鑑賞でだったのですが、逆に今現在のジュリーの表情、シワ、たるみ、息づかい、すべてがドアップで映し出されたため、《愛まで待てない》を歌い狂うジュリーの鬼気迫る迫力、狂気を感じ取ることが出来たのでしょう。
ずっとライヴをやり続けてきた果ての、75才のロッケンロールジジィの途方もない魅力!説得力!
情熱の赤旗が大きくはためくステージの端から端まで、白髪の長髪を振り乱し、息を切らしながら全速力で走る!歌う!叫ぶ!剥き出しの沢田研二! このリアリティーは、文章では書き現せないほどに感動的でした。その時つぶやいた一言が、
何なんだ、このスーパージジィは!
僕の大好きなお笑い芸人の世界でも、若手時代のアナーキーなギャグやパフォーマンスを齢を重ね老人になっても当時のままのほんいきのテンションでやり続けることが出来たら最高だと言う芸人さんが多くいます。 たとえばキートンやチャップリン(古っ!)が老人になっても同じパフォーマンスはやれません。たとえやったとしても痛々しくて見てられないでしょう。今の北野武がタケちゃんマンのパフォーマンスで笑わせるのは不可能のように。(例えがよくわからん!)
ジュリーはロックンロールでそれをやりきるのです。虚飾を全て剥ぎとった、今現在の正味の人間・沢田研二が全盛期のジュリーそのまんまをやりきってしまうのです。 多少の痛々しさも感じなくはないし、カッコ悪く映ったりもするのですが、僕的には、いまだに《初期衝動》に突き動かされる《スター・ジュリー》第五形態の沢田研二が過去最高にカッコよく思えるのです。
誰よりもロックなのです!
誰よりもパンクなのです!
今後、増々枯れゆく沢田研二は、僕達にどんなジュリーを魅せてくれるのでしょうか? 今現在の沢田研二で《スター・ジュリー》を歌ってほしい。今現在の沢田研二だからこそ演じれるお芝居を演じ続けてほしい。
今回のブログでも最後まで捉えきれなかった僕なのですが、これからも諦めず問い続けることでしょう
《永遠の謎・沢田研二とは何か?》を。
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