ネオ昭和歌謡①《なかの綾》 昭和歌謡曲を新たなラテンアレンジで今に伝える、ホステス感を全身にまとった歌謡シンガー。

なかの綾

ちょうどいい美しさ。ちょうどいい歌唱力。ちょうどいいヤサグレ感。そしてちょうどいいキャバレー感。 昭和歌謡を今に蘇らせ、新たなエッセンスを注ぎ込み、ちょうどいい昭和感満載で歌い上げる歌謡シンガー最後の砦《なかの綾》 瀕死の歌謡曲を救えるのは、もうあなたしかいないのです!

先日、ももクロが出ていたので、フジテレビ《サンキュー歌謡曲一座》を録画。ちょっと見てみたのですが、これが見るに耐えない代物。土曜のゴールデンタイムど真ん中、フジテレビが勝負に出た番組がこれなのか?これで良いのかフジテレビ

既に歌唱力も表現力も衰えた昔の歌謡歌手を集め、くだらないトークと想い出話に終始。いったい誰が見るんだ!(80過ぎのお年寄りはけっこう楽しんでみているそう) 昭和歌謡曲の素晴らしさ、凄さがまったく演出されておらず、昭和歌謡曲が大好きな僕としては、悔しくて悔しくて泣きたくなったのです。

おそらく、作り手が昭和歌謡の良さをまったく理解していない若い人で、このへんの歌謡歌手を集めて、このへんの曲を歌わせとけばいいだろう的に適当に制作しているのでしょう。この時間に放映するのだから若い世代にも昭和歌謡曲の素晴らしさを知らしめ、未来に向けた番組を作ってほしかった……。

からす

ブログでは、あまり否定的なことは書きたくないのですが、昭和歌謡曲が大好きで、子守唄代わりに育った僕としては、どうしても許せなかった。 半分リタイヤしたような当時の歌手を集め、ただ単に歌わせてもダメなのですよ!

いまだに現役の歌唱力と表現力を維持している歌謡歌手を集め(五木ひろし・沢田研二・石川さゆり・島津亜矢子・坂本冬美など)、若い人にも十分に伝わるようなアレンジを施し、腕のいいバックミュージシャンを揃え、美しい歌謡コーラスを添えたうえで、しっかりリハーサルを重ねたハイレベルなものをやってほしかった。昭和歌謡曲の素晴らしさを引き立てるよう、今に通じるアレンジと演出は絶対不可欠なのです。

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そこで、《なかの綾》

7、8年ほど前、ちょっとした昭和歌謡のイベントを企画していた折、YouTubeで昭和歌謡曲の動画を見まくっていたところ、たまたま見つけたのが、なかの綾 《恋におちて Fall in Love》のPV。 言わずと知れた小林明子のヒット曲で、原曲はスローテンポなバラードなのですが、これをなかの綾は、軽快なラテンアレンジの演奏のもと、昭和テイスト満載のキャバレーやクラブのセットを背景に、男から男へと夜の蝶のように舞いながら歌います。

いやぁーっ、痺れました。

《恋におちて Fall in Love》はこんなに素晴らしい曲だったのか?と再認識。これぞカバー曲の醍醐味。僕の中では原曲をも大きく越えていたのです。

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歌謡曲の醍醐味は、単純なファンタジーや恋愛の歌詞と、それをストレートに伝える美しいメロディー。それを生かしつつ軽快なラテンアレンジを施し、全盛期の日活映画彷彿させながらも、新たなフェイク昭和感?を感じさせてくれたのが、《恋におちて Fall in Love》PVだったのです(この安っぽさがたまらない!)。

一発でファンとなり、その後、この人のカバーしている昭和歌謡曲、すべて聴きまくっておるのです。

昭和歌謡曲のカバー集は、なかの綾にぴったりな絶妙な選曲。そして何より、ほぼすべての曲がラテンアレンジになっており、昭和歌謡特有のまったり感は残しているのですが、どこか軽くて心地よいのです。

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《なかの綾》

1985年5月7日生まれ、京都府出身のヴォーカリスト。2010年、デビューアルバム《ずるいひと》でデビュー。 《恋におちて Fall in Love》のPVは、その時に製作されたもののようです。

18歳から祇園のクラブでジャズを歌っていただけに、歌唱力はたしかで、当初はジャズ、ソウル、R&Bといった洋楽ばかりを歌っており、歌謡曲どころか日本語の歌は絶対歌いたくなかったそうなのですが、プロデューサーはせはじむ《ネオ歌謡曲》の企画に半信半疑で乗っかってみたところ、これが見事にドハマりしてその才能を開花させます。

ただ単に昭和歌謡をなぞっているのではなく、幅広い年代にアプローチできるように、今の時代にもキッチリハマるアレンジと演出。何より心地よいのは、多くがラテンのリズムで歌謡曲を蘇らせている所。サンバ、タンゴ、ルンバ、サルサ等で歌われる、歌謡恋歌は湿っぽくならず、瀕死の状態の演歌さえも蘇らせる可能性を秘めていると僕は思うのですが…。

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カバー曲で、秀逸なものを上げると、

恋におちて

ラブ・イズ・オーヴァー

ちょっと待って下さい

氷雨

黄昏のビギン

逢いたくて逢いたくて

別れても好きな人

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー

そしてティンバレス奏者、ウィリー・ナガサキの曲を歌った《別れのマンボ》さらには、昭和歌謡臭満載のオリジナル曲、《じゅうくはたち》

この曲、なんと作曲があの林哲司で、はじめてコッテコテの歌謡曲に挑戦したものなのですが、笑うくらい最高に素晴らしい出来のズンドコ歌謡曲。さらにさらに、この曲のPVを監督したのがなんと、アニメ《アキラ》大友克洋! なかの綾の大ファンなのだそうです。

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なかの綾は、ジャズを歌わせても絶対に素晴らしいのでしょうが、この人の声質は歌謡曲を歌うためのもの。意識せずとも昭和のノスタルジーをダラダラとまき散らしており、それを見いだしたのが音楽プロデューサーはせはじむなのです。

それを可能にしたのははせはじむが、昭和歌謡を本当に愛していたからこそ。冒頭に書いた、フジテレビ《サンキュー歌謡曲一座》の製作陣とは雲泥の差。今のフジテレビは何をやってもダメなのだから、3時間丸々はせはじむにやらせればよいのです。

新旧の歌謡歌手を集めて、昭和歌謡の素晴らしい所を存分に演出してもらい、今の時代にも十分存在意義がある所を見せてもらいたい。

《ネオ昭和歌謡》みたいなものを歌っている、若い才能豊かなミュージシャンは沢山います。昭和歌謡曲の素晴らしさはを理解しているのは、僕ら年寄りだけではなく、若者にも多くのファンがいるのです。ジャズ、ロック、フォーク等のジャンルを問わずに、林哲司みたく、バリバリ現役のクリエーターに作曲を依頼し、新たな演出で攻めて行けば、必ず活路は開けるはず。

からす

《ネオ昭和歌謡》で蘇る往年の歌謡歌手や演歌歌手は沢山埋もれています。いまだとんでもない歌唱力を維持しているジジィやババァは日本中にいるのです。

その人達が、プライドやこだわりをちょっと脇において若者と一緒に《ネオ昭和歌謡》に挑戦してもらえれば…。

胸躍る《ネオ昭和歌謡》。僕は一人勝手に応援し続けます。

そして次回は《サロメの唇》《浜田マロン》と続いてゆくのです…。

おしまい