《我が心のラテンミュージック10選》 今こそ聴こう! 心弾み、心躍り、心湧きたつラテンのリズムを!

ラテンミュージック

昭和歌謡曲とラテンミュージックほど相性の良いものはなかったのです。終戦後、連合軍に徹底的に打ちのめされた日本人は深く考えることを止め(あまりにも惨めで考えたくなかった)、がむしゃらに働きます。その時代のBGMとして大ブームとなったのが能天気なラテンミュージック。まだロックンロールは日本に上陸しておらず、当時の若者は、ルンバ、サンバ、チャチャチャにタンゴで踊りまくっておったのです。

コロナ渦で、大した仕事もしていないくせにブログもサボって、ボーッと自堕落な生活を送っていた報いか、人生最高のふくよかな体形になってしまい、さすがになんか運動をせんといかんと一念発起! その日からラテンミュージックに身体をゆだね、《シャル・ウィ・ダンス》竹中直人(役所広司ではないのかっ!)にでもなるしかないと、妄想を膨らませながら眠りにつく日々。 

しかし、社交ダンスは死ぬほど恥ずかしいので、スーパーで購入した一袋60円のかき氷を食べ続けながらラテンミュージックを聴きまくるだけ。 こんなんで痩せるはずもなく、自己最高体重を更新し続ける残暑厳しい9月上旬の昼下がり。

それでもラテンのリズムは狂おしい程に心地よく、こんな僕をも幸せにしてくれるのです。今日も飼い猫二匹と一緒に踊りながら

「細かいことは気にしない!ワカチコ、ワカチコ!」(ふるっ!)

と叫びまくりつつ思いついたのが《我が心のラテンミュージック10選》

西田佐知子《コーヒールンバ》から始まる僕のラテン体験は、それほどたいしたことはないのですが、大好きな昭和歌謡曲との相性はすこぶる良く、ラテンのリズムはふんだんに取り入れられています。そんな歌謡曲を聴きながら育った僕は、知らず知らずのうちにラテンの能天気さが身体全体に染み込んでしまったのです。

戦後まもなく日本の歌謡界は、大ラテンブームがやってきて大いに盛り上がります。その後も何度かのブームを経て《シャル・ウィ・ダンス》に至り、狂乱のジジババが踊り狂う社交ダンスブームが到来するのです。

次々にオープンした駅前の社交ダンススクールもほぼ消え去りましたが、ラテンミュージックは、何時の時代も僕の心から離れないのです。

今回もいつものように洋楽、邦楽、入り乱れ、何の脈略もない選曲でお送りする《我が心のラテンミュージック10選》。 心弾み、心躍り、心湧きたつ魅惑のラテンミュージックの世界を 心のタガを全て外してお楽しみくださいっ!!

①《スムース》  カルロス・サンタナft.ロブ・トーマス

ラテンロックの雄、カルロス・サンタナが、1999年に7年ぶりにリリースしたアルバム、『スーパーナチュラル(SUPERNATURAL)』に収録された曲で、シングルカットされたもの。 

《マッチボックス・トゥエンティ》ロブ・トーマスが書き下した楽曲で、ボーカルとしても参加。そのセクシーな歌声はサンタナのギターとジャストフィット! 

この曲はロブ・トーマスが、当時結婚したばかりの妻(プエルトリカン)に捧げた内容になっており、狂おしい程に愛を語るその渋い歌声は、サンタナの悶えるようなギターフレーズと相まって、聴くものの欲情をかきたてます。


おい、すごくホットだぜ 真昼の太陽のすぐ近くにいるみたいだ 

きみのささやき声はみんなを溶かしてしまうっていうけど

なんでそんなにクールなんだ 俺の小さなお人形さん 

スパニッシュ・ハーレムのモナ・リザ  きみは俺の生き甲斐

俺のノリに入って来いよ、今すぐ

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②《La Salsa LLego》 ソノーラ・カルセレス

コロンビアのメデジンで1995年に結成されたサルサ系人気バンド、ソノーラ・ルセレス。 理屈抜きにご機嫌で能天気なサルサのリズムで、肉感的な女性の踊り狂う姿がたまりません! 今この瞬間にすべての欲情をさらけだし、サルサのリズムに合わせて身体を震わせ歌を歌う。
そう、ブルースリー先生の言った

Don’t think. Feel! (考えるな、感じろ!)」

の生き方そのものなのです。 

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③《Uptown Funk》 マーク・ロンソン ft. ブルーノ・マーズ

ハワイ出身のシンガーブルーノ・マーズは、R&Bのミュージシャンなのだけれど、身体中からラテンの匂いを放っており、調べると父親にプエルトリカンの血が混ざっていたのです。僕的にはもうラテンのカテゴリーにしっかり入っており、この曲を外すわけにはいかなかったのです。

このMVは最高のエンターテーメントに仕上がっており、さすが世界的DJプロデューサー、マーク・ロンソンの面目躍如といったところか。

さらに、ビヨンセと共演した第50回スーパーボールのハーフタイムショーでも歌われており、その映像は最高級のアメリカンエンターテーメントとして世界中に放映されたのでした。

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④《どうにもとまらない》 山本リンダ

ここいらで日本昭和歌謡の誇るラテンミュージックの歌姫、山本リンダ嬢にご登場願います。
 
もう、突き抜けているのです!

吹っ切れているのです!

アイドル時代《こまっちゃうナ》で大ブレイク。しかしながらその後は鳴かず飛ばずで低迷。で、1972年、阿久悠・都倉俊一のコンビで書き下ろれた《どうにもとまらない》を満を持してリリース。 黒いパンタロンに赤シャツの裾をまくり上げたへそ出しルックで歌い踊り、世間を驚かせます。

この起死回生の仕掛けはドハマりし、第二次リンダブームを巻き起こします。 映像を見ていただければおわかりのように、ここまで突き抜けて踊り狂うリンダさんを 誰にも止めることはできません。いや、止めてはいけないのですっ!

「リンダ、このラテン歌謡で芸能界を生きてゆくのよっ!」

「リンダ、羞恥心なんか捨て去って、気が狂ったように踊りまくるのよっ!」

の覚悟がビンビンに伝わって突き刺さってくるのだから、誰が何と言おうと認めざるを得ないのです。凄まじいタレント魂はアッパレの一言!

⑤《A Night Like This》 カロ・エメラルド

このブログを開設して間もない頃、一度記事に上げているカロ・エメラルド。このオランダのジャズシンガーはライトでお洒落なラテンナンバーを何曲も歌っており、このMVは映像も素晴らしく何度観たかわかりません。 

オランダのジャズは軽快でポップなものが多く、カロ・エメラルドの楽曲もレトロなのだけれどアレンジが斬新で、万人受けするものが多いように思うのです。

この人の楽曲は、ほかにも沢山素晴らしいものがあるので、ぜひ検索して聴いて観てみてください。 ただ、非常にエキゾチックで美しいのだけれど、見る度にそのシルエットが大きくなっているように思うのは、僕の気のせいなのか? 

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⑥《さいざんす・マンボ》 トニー谷 

昭和日本が世界に誇ったヴォードヴィリアン。 歌も司会も役者も器用にこなすオールマイティーな芸人さんで、おそらく日本で最初の本格的なヴォードヴィリアンだったのではないでしょうか? 

僕がまだ保育園児だった昭和30年代に放映されていた《ニッケ・アベック歌合戦》は、司会者のトニー谷が、そろばんを叩きながらリズミカルに

「♪あなたのお名前なんてえの」

と出演者に問えば、

♪〇〇〇〇と申します」

とツイストしながら答えるやり取りが茶の間に大いに受けて大ヒット。その名を不動のものにするのですが、漫画《おそ松くん》のキャラクター《イヤミ》のモデルになったほど、その嫌味な性格は万人に嫌われ、製作者、出演者にも総スカン。徐々にテレビから消えてゆきます。

僕が最後に見たのは、タモリ《今夜は最高!》に出演した時。 当時のタモリの芸風にも通じるものがあり、とても相性がよく面白かった記憶があります。

今回上げた映像は、トニー谷全盛期のテレビ映像。キレッキレのダンスとそろばん捌き、今だにこのグルーヴ感を出せる日本の芸人は、出ておりません。 バックに映る共演者のしらけた態度が、いかに嫌われていたかを如実に表しております。

しかしながらその芸は超一流、情報の流通が今とは比べ物にならないほど少なかった昭和の時代は、そのタレントの芸のみを色眼鏡なしで観ることの出来た、ある意味幸せな時代だったのかもしれません。

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⑦《 Let’s Never Stop Falling In Love》  ピンク・マルティーニ  

この記事を書くきっかけになった、痺れるほどに大好きなピンク・マルティーニの名曲《 Let’s Never Stop Falling In Love》のご紹介。

まあ、この曲をご存知の方は限りなく少ないとは思うのですが、ピンク・マルティーニは、アメリカで人気のジャズアンサンブル。日本の流行歌手兼、童謡歌手兼、女優兼、コメディエンヌ兼、バラエティータレントの由紀さおりをフューチャーしたアルバム《1969》で日本でも一躍有名になったので、ご存知の方も多いのでは。 忘れかけていた、昭和歌謡歌手・由紀さおりの魅力を僕達に再認識させてくれた功績は絶大なものがあったのです。

で、この曲《 Let’s Never Stop Falling In Love》。 

コンガの心地よい響きからラテンのリズムに乗ったブラスセクションのイントロ。もうこの時点でとろけてしまいそうになるのは僕だけでしょうか? 

黒い下着姿の美しいお姉さん①がルージュをひく姿を鏡越しに映し出すショットのなんと色っぽいことか。それと並行して草原で誘うように歌う、黒い衣装に黒い大きな帽子をかぶった妖艶なお姉さん②。そしてそのバックで、終始意味不明の踊りを踊る、白シャツ赤ネクタイに黒のスラックス姿、ポマードべったりテカテカ頭の4人の男性ダンサー

最初にこの映像を見つけた時は、色っぽいお姉さま方もさることながら、テカテカ頭の4人の男性ダンサーが気になって気になって、このへんてこな振り付けの意味を探ろうと何度も繰り返し見るのですが、見れば見るほどさっぱりわからんっ! しまいには意味などどうでもよくなって、この楽曲そのものが大好きになっていったのです。  そう、ピンク・マルティーニの演奏は非常にレベルが高く、どの曲を聴いても素晴らしすぎるのです。

それにしても、ポマードべったりテカテカ頭の4人の男性ダンサーは、何を表現していたのか? それとも何の意味もなかったのか? 

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⑧《じゅうくはたち》 なかの綾

ネオ昭和歌謡曲の歌手、なかの綾お姉さん。 この人も随分前にこのブログで紹介しているのですが、沢山の昭和歌謡曲をラテンアレンジでカヴァーしている歌い手さんなのです。 そのカヴァー曲を聴くと、やはり昭和の歌謡曲とラテンの相性は抜群なんだなぁと再認識するのです。

で、この曲《じゅうくはたち》は、数々のJ-popのヒット曲を飛ばした林哲司が作曲。2016年にリリースされた、最高最強のラテン歌謡となっております。 

キャバレーのステージにスタンバイした歌謡バンド独特の、どこかヤサぐれていながらも心地よいブラスセクションのイントロのメロディーの響きから、少し崩れ気味の体の線がより一層の色香を漂わせている、なかの綾お姉さんの登場! 

せつなく、けだるく、やるせなく、まったりした昭和歌謡曲のグルーヴ感を表現できるのは、今の時代、なかの綾お姉さんを措いて他にはいません。そして、ここまでコテコテで最高のラテン歌謡曲を作曲した林哲司に大拍手なのです。さらにこの曲を紹介するキャッチ最高のキャッチコピーは、

「夜の街を彷徨う哀愁のグルーヴィー・ズンドコ歌謡」

で、このMVを手掛けたのは、な、なんと、傑作SF漫画《AKIRA》でおなじみの大友克洋なのでございます。この場末感、キャバレー感、ヤサグレ感、そしてジャパニーズ・ラテン感! さらにそのいかがわしさを引き立てているのは、ちょび髭のバンド指揮者、そのインチキ感はハンパありません。

サルサアレンジの《恋におちて》。こちらも最高!

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⑨《ベサメムーチョ》 桂銀淑

覚せい剤で潰れてしまった韓国史上最高の女性歌手、桂銀淑。 近年、母国韓国で復活したようなのですが、再び来日する夢はかなわないのでしょう。

このブログを始めてすぐに簡単な紹介記事を上げているのですが、いまだに、時々無性に聴きたくなるそのハスキーボイス。演歌、ポップス、ジャズ、ブルースと何でも魅力的に歌いこなす桂銀淑

今回ご紹介するのは、トリオ・ロス・パンチョスで大ヒットした《ベサメムーチョ》のカヴァー。日本ではラテン歌謡の定番として沢山の歌い手にカヴァーされているのですが、桂銀淑が日本語で歌うとラテン感は薄れコテコテのド演歌なのですが、これがまた最高にいいんです! 

南米の女性の直情的な色気は、ある種の恐怖を感じる僕なのですが、桂銀淑のせつなすぎる色香と情念は、知らず知らずのうちに僕の身体の隅々まで沁み込んで、夜な夜な悶え苦しむのです(こっちの方が遥かに怖いやん!)。

桂銀淑とは全く関係ないのだけれど、シャンソンを歌うアメリカのジャズバンド《Avalon Jazz Band》の《ベサメムーチョ》もお聴きください。

とっちゃん坊や、お目めぱっちりキューピーさんの、素晴らしいヴァイオリン演奏も楽しめます。

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⑩《リベルタンゴ》 アストル・ピアソラ

さて、しんがりにひけぇーしは、アルゼンチンタンゴの至宝、バンドネオンの魔術師、アストル・ピアソラ先生のご登場です。

タンゴと言えばピアソラ、ピアソラと言えばタンゴ

と申すように(僕だけしか言っていません)、ラテンと言えばこの人を外すわけにはいかないのでありす。バンドネオンの音色と、それに絡むタンゴ独特のバイオリンの響きが癖になり、一時期ピアソラにハマってよく聴いていたものです。しかし、ピアソラのタンゴは、ラテンに求める明るさ、軽さ、解放感は微塵もなく、ラテンでは異質でどこか哲学的苦悩を感じてしまうのです。それもそのはず、母国アルゼンチンでもピアソラの音楽はタンゴではないと言われていたほどなのです。

そして、ピアソラの音楽を聴くたびに《タンゴは苦悩》というフレーズが頭をよぎってしまうようになった僕なのですが、その演奏レベルは非常に高く、暗く重たくとも、心を奪われ聞きほれてしまうのは、僕だけではないでしょう。


ピアソラの生涯は《ピアソラ 永遠のリベルタンゴ》として、2017年に映画化されており、既成のタンゴ音楽と格闘した姿が記録されています。

からす

以上、《我が心のラテンミュージック10選》をダラダラとやってみたのですが、一言でラテン音楽と言っても様々なジャンルがあり、とてもじゃないが僕の貧弱な音楽知識では捉えられるものではありません。ただ、明るく楽しいメケメケなラテン的思考は、今の激動の時代を生き抜くヒントになるのかもしれません。 

おしまい