詩人・川崎洋《いま始まる新しい今》 加速度的に変容してゆく令和の時代、僕たちは次々と立ち現れる《新しいいま》と、どう対峙すればよいのか? それは僕達も常に《新しい自分》に変容して生きてゆくこと。

いま始まる新しいいま

2023年 あけましておめでとうございます。
近年の世界情勢は想定外の出来事が次々と立ち現れ、これまでの概念や価値観、社会のシステムそのものが崩壊しつつあります。この現実に対峙したときの心の在り方を考えた時、思い出したのは、詩人・川崎洋の詩《いま始まる新しいいま》。

《いま始まる新しいいま》 川崎洋


心臓から送り出された新鮮な血液は
十数秒で全身をめぐる
わたしはさっきのわたしではない
そしてあなたも
わたしたちはいつも新しい


さなぎからかえったばかりの蝶が
生まれたばかりの陽炎の中で揺れる
あの花は
きのうはまだ蕾だった
海を渡ってきた新しい風がほら
踊りながら走ってくる
自然はいつも新しい


きのう知らなかったことを
きょう知る喜び
きのうは気づかなかったけど
きょう見えてくるものがある
日々新しくなる世界
古代史の一部がまた塗り替えられる
過去でさえ新しくなる


きょうも新しいめぐり合いがあり
まっさらの愛が
次々に生まれ
いま初めて歌われる歌がある
いつも いつも
新しいいのちを生きよう


いま始まる新しいいま

この詩は小学校の教科書でも扱われているスタンダードなものなのですが、今生きていること、この世に確実に存在している事の感謝、歓喜、不思議をド直球に表現しています。禅宗の基本理念である《今、この瞬間を生きる》と同じことを謳っているのでしょうが、難しい言葉を一切使っていないため、左脳を飛び越えダイレクトに僕の右脳を直撃したのです。その衝撃を左脳になんとか置き換え、解析し、つたない言葉で綴ってみようと思うのです。(あくまでもわたくしの勝手な解釈です)

心臓から送り出された新鮮な血液は
十数秒で全身をめぐる
わたしはさっきのわたしではない
そしてあなたも
わたしたちはいつも新しい


ここでは人の身体は常に生まれ変わっており、60兆ほどの細胞が日々再生され宇宙の全てのものと同じように瞬間瞬間に変化していると言っています。
これは肉体的な物だけではなく精神的、感情的にもあてはまり、《僕》《あなた》がそれぞれ抱いている《固定してしまったイメージ》は次の瞬間にはあてはまらなくなります。常に新しい《僕》として新しい《あなた》と対峙する事で二人は《固定してしまったイメージ》から解放され、新しい《僕》と新しい《あなた》は真っ新な心と目でお互いを見ることが可能になります。

さなぎからかえったばかりの蝶が
生まれたばかりの陽炎の中で揺れる
あの花は
きのうはまだ蕾だった
海を渡ってきた新しい風がほら
踊りながら走ってくる
自然はいつも新しい


同じように森羅万象すべてのものも変化しており、さらにその変化は宇宙に存在するものすべてのものとシンクロしていると歌っているように感じるのです。


孵化した蝶を見ることの出来る喜び

花が開花したときに感じる至福感

心地よい春風が踊りながら走ってくるときの高揚感

このように森羅万象の変化は、今現在の《僕》の心のあり方に確実に響きあい、その響きで次々とやってくる《新しいいま》が作られてゆくのでしょう。

きのう知らなかったことを
きょう知る喜び
きのうは気づかなかったけど
きょう見えてくるものがある
日々新しくなる世界
古代史の一部がまた塗り替えられる
過去でさえ新しくなる


《僕》の心がいつも新しく生まれ変わり、真っ新な《感受性》が開いてさえいれば、知らなかったことを知る喜び、気付かなかったものが見えてきた驚きを《僕》の心は感じることができるのです。

きょうも新しいめぐり合いがあり
まっさらの愛が
次々に生まれ
いま初めて歌われる歌がある
いつも いつも
新しいいのちを生きよう

いま始まる新しいいま


新しい《僕》と新しい《あなた》とのめぐり合いは、まっさらな愛を生み、新しい《僕》と新しい《世界》ふれあいは、歓喜のハーモニーを奏でます! 

常に新しい心で世界と対峙できたなら、不可逆的な《時間》の流れや、《思考》《想念》の呪縛から解放され、その喜びのベクトルは毎瞬毎瞬、360度に放たれ、その光は《僕》の未来、さらには過去をも遍く照らし、祝福と変えてしまうのです。
物心がつく前の幼児のように、《固定されたイメージ》を持たず、毎瞬毎瞬、《新しいいのち》で生きることで、世界は極彩色に輝き始め、美しい音楽が聞こえてきます。

老いも若きも、女性も男性も、お金持ちも貧乏も、持って生まれた長所や短所も、生活環境が素晴らしくても最悪でも、毎瞬毎瞬、そのすべてをニュートラルに戻して、常に《新しいいのち》で人や自然とふれあうことは、けっして不可能ではないはず。その一点に希望を持てば、どのような未来であっても

世界はきっと美しい。


詩人・川崎洋の言葉をお借りして、改めまして新年のご挨拶を…。 


いつも いつも
新しいいのちを生きよう


いま始まる新しいいま