気品高き白蛾の舞い 孤高の天才エリック・ドルフィー

《H ZETTRIO》に触発されて僕の中のジャズ熱が再燃する中、ジョン・コルトレーンに続いての登場は、孤高の天才エリック・ドルフィーです。

コルトレーンのアルバムを久しぶりに聴き漁っていると、出てきました大好きなアルバム、ライヴ・アット・ザ・ ヴィレッジ・ヴァンガード

この時期、コルトレーンのグループでも演奏していたエリックドルフィーがバスクラリネットで参加しています。 学生の頃、エリックドルフィーにハマり込んで聴きまくっていた時期があり、特にフルート演奏は、ローランド カークのフルートと同じくらい大好きでした。

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最初に聴いた印象が、全くよく分からないけど不思議に気持ちが良く、そのアドリヴのフレーズが耳から離れなくなってしまいました。アルトサックス、バスクラリネット、フルートと3つの楽器を持ち替えて 演奏するのですが、当時バスクラリネットなる楽器の音をはじめて耳にしたものですから、その衝撃は大変なものでした。しかし、独特のアドリヴプレイなので好き嫌いがハッキリ分かれ、嫌いな人には受け入れがたかった様で、特にバスクラリネットの演奏は「馬のいななき」などと揶揄され、敬遠されることも多かった様です。

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最初はチャーリーパーカーのコピーから始まっているはずなので、ルーツはビバップでその影響は見受けられる ものの、当時のどのアルト吹きとも全く異なる、独特の世界を感じるのです。 オーネットコールマンのアルバム「フリージャズ」にも参加しているので、何故かフリージャズのミュージシャンとして捉えられがちですが、僕はしっかりした伝統的なジャズ理論の上に基づいた前衛的演奏者としての認識です。

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ドルフィーのフルート演奏についてですが、ローランドカークのフルートが真っ黒な闇の底から奏でられる 魂のうめき声(それでも不思議と明るくユーモラスで心地よい)だとするならば、ドルフィーのフルートはどこか高貴で格調があり、僕には美しい白い蛾の舞い踊るイメージが付いて廻るのです。 これはバスクラリネットやアルトサックスの演奏時にも共通するのでが、フルート演奏時に顕著です。

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では、お勧めのアルバムですが、ライヴ盤だと(At the Five Spot )で決まりですね。ブッカー・リトルの トランペットにマル・ウォルドロンのピアノ。多分にフリージャズに寄せた演奏ですが、ドルフィーとブッカー リトルの演奏が凄まじい。お互い縦横無尽に即興演奏を繰り広げ、ライヴならではの白熱バトル! マル・ウォルドロンの独特のピアノ演奏(大好き)も秀逸です。

名盤とされているのがブルーノートレーベル(Out to Lunch)ですが、僕には全体的にちょっと固く感じられて、 プレスティジレーベル(Out There)ばかり聴いていました。6曲目の(Sketch Of Melba)でのフルート演奏 はことのほか美しく、ロンカーターのチェロと相まって不思議な世界に浸れます。

さて次回はフルート繋がりで、奇才ローランドカークになだれ込むのか?

おしまい