真っ黒闇鍋ごった煮エンターテーメントミュージック!現代にも通じる圧倒的なパフォーマンス。奇才ローランド・カーク

ローランド・カーク

何とでも言ってくれ、俺の表現はこれなんだ! ジャズのカテゴリーを軽々と飛び越え、そして最高のジャズをやる。ローランドカークのパフォーマンスは ジャズ本来の持つエンターテーメント(原点回帰)だ!

奇想天外な演奏スタイルで、グロテスクジャズ、インチキジャズと揶揄され、正当な評価を得られにくく、 色物として扱われることも多かったローランド・カーク。ジャズファンの中でも食わず嫌いな人も沢山いた事と思いますが…。
もしかしたら僕、ジャズメンの中で一番好きかもしれません。

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ジャズが好きになって間もなくの学生時代、町の図書館のレコード視聴コーナーで、初めてローランドカー クのテナーサックスの音を聴いた時は、ちょっとこれは理解不能で僕には分からんと途中で聴くのを止めてしまいました。何故か? そう、とにかく真っ黒すぎるのです。真っ黒ド・ブルースなのです。おしゃれ感ゼロ。メロウ感ゼロ、癒し感ゼロ。とにかく真っ黒過ぎて、当時の僕には取りつく島がありませんでした。

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時は過ぎ、一通りジャズ名盤なる物を聴き終え、ある程度の免疫が付いた頃、よく通っていたジャズ喫茶で流れていたフルートの音色、それが2度目のカーク体験でした。 これは衝撃でした。初めて聴いたハミング・フル ート? フルートを演奏しながら同時にユニゾンでハミングする。で、同時に鼻で縦笛を吹く刹那、サイレンを鳴らす。そして銅鑼の音。どうです?メチャクチャでしょう。そう、メチャクチャで超かっこいいんです、この音が、このグルーヴ感が。それからというもの、ドハマりにハマり、真っ黒ド・ブルースの虜となりました。

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フルート演奏は序の口で、ローランドカークのバケモノたる所以は、サックス3本同時演奏(その上、即興で信じられない程美しいハーモにを奏でる)にあります。テナーと、あと…、よく解らんアルトみたいなソプラノみたいなの(本人が骨董屋でみつけたものらしい)3本を口いっぱいに頬張り、バリバリ吹きまくる。
そしてもう一 つの専売特許、ノンブレス奏法! 息継ぎ無しで延々と吹きまくる、いわゆる循環呼吸です。一説によると2時間 以上もノンブレスで演奏したと言う事ですから凄い!

どうですか皆さん、益々訳分からんでしょう。そういう人はとにかく一度映像を見て下さい(YouTubeに動画がたくさん上がっています)もっと訳分からんようになりますから。

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後期の音楽スタイルはジャズにとどまらず、ゴスペル、R&B、ソウル、ポップス、クラシック等、何でもありの、 真っ暗闇鍋ごった煮エンターテーメントミュージック。熱く、黒く、自由で、楽しく、黒人音楽の根底にある、生きる 事の喜び悲しみ、天国、地獄、そしてその先にある人間賛歌を歌い上げ(実際、本人歌も歌います)、聴く者の魂をも揺さぶります。

ローランドカークは幼年期に、病院の不手際で盲目となります。レイチャールススティービーワンダー等も そうですが、特に聴覚にすぐれ、生まれ持った音楽の才能が重なって、天才的なミュージシャンとなりました。 しかし、その異常にエネルギッシュな演奏スタイル(身を削るがごときの)から当然のようにぶっ倒れてしまいます。 その後がまた凄い。脳卒中で身体が半分動かないにもかかわらず、それを克服して復活してしまいます。

閑話休題

ここ最近よく思うんですけど、人はそれぞれ様々な環境のもと、精神的にも身体的にも沢山の才能と沢山のハン ディーを抱え否応なしにこの世界へたたき出されます。顔やスタイルなどビジュアルの美醜。スポーツ、学問の 得手不得手。その他様々な不公平、不条理をもって生きて行かざるを得ません。 そこに不平不満や愚痴を垂れ流しながら生きている人と、ローランドカークの様に、自身の境遇を当たり前の様に受け入れ、直感を大切に地に足をしっかり着けて、楽しい事を全力で突き進むことができる人では、運命は大きく違ってくるようです。

「運命、宿命は決ってるからこそ人間は100%自由だ」と何処かで読みましたが、まさにその通り。 僕も思い悩むことで、エネルギーを漏電せずに直感を大切に、その場を全力で生きて行こうと思うのですが… (これが簡単そうで本当に難しい)。改めましてローランドカーク先生凄い!!

まあ、ダメダメな自分も含めて楽しんでいきましょう。

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で、アルバムです。 ローランドカークここにありの一枚は、なんと言っても「Volunteered Slavery」。これにつきます。 何度も聞きました、泣きました、笑いました。もうまさに真っ黒闇鍋ごった煮エンターテーメントミュージック。 ジャンルの枠や理論理屈などいとも簡単にたたき壊して、何でもありの世界に強引に引きずり込んでくれます。 前半がスタジオ録音。後半が「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル」でのライヴ録音。このライブでのハミングフルート演奏、サックスの3本同時演奏、ノンブレス奏法、すべて圧巻!

そして次のおススメのアルバムは「Domino」これはオーソドックスなジャズの名盤です。正当なジャズ演奏でも 誰にも負けない彼の実力が伺い知れます。

最後に個人的に大好きなアルバムとしては「THE CASE OF THE 3 SIDED DREAM」晩年の傑作です。 マイルスの演奏で有名な「BYE BYE BLACKBIRD」も収録。何とカーク先生、トランペットも吹きます。 これがまた味のある演奏で素晴らしい。

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人生小賢しいことはしないで、真っ正直に堂々と生きて行こう(なかなかそうも行かないんだけど)と思わせてくれる、ローランドカーク先生でした。

おしまい