猿でも描けるCGパース プロしか描けないCGパース

レトロ館-夜

レトロ館-昼

建築や商業施設等のプレゼンテーションに欠かす事のできないパース(完成予想図)。 その善し悪しでクライアントに与えるインパクトは大きく異なります。

アナログの手描パースを長い間作成して来た身としては、CGパースを語るには、経験不足でちょっと申し訳ない思いですが、仕事をやって行く上で気がついた事を少し。

からす

大規模な案件等では、CG動画も当たり前になって来ている今、長い間かかわって来たパース業界もずいぶん様変わりし、もはやCGを扱えないと成立しなくなっています(もうずいぶん前からですけど)。

一時代前パース作成は、ほぼ専門職で誰もが出来る訳ではありませんでした。まず透視図法の基本を勉強し、 墨入れのやり方、着色技法等、水彩画の基本ぐらいは勉強した上、ある程度の場数を踏んでやっとなんとかやっていけるのかな?という感じでした。
今はパソコンを扱えさえすれば、知識やキャリアがなくてもソフトが勝手に作成してくれるので、透視図法も着色技法も関係なくそこそこのパースが作成出来ます。なので、誰がやっても 同じようなつまらない物になってしまいがち(手描の頃は描き手の個性の発表会でした)なのでしょう。

手描きパース1

パースb

ーーーーーーーーーーーーーーーーー手描きパース作品ーーーーーーーーーーーーーーーーー

そこで専門職としてやって行くにはどうすれば良いのか、ちょっと考えてみましょう。

まず、資金に余裕がありパソコンに精通している人であれば、徹底的にディティールのクオリティーを上げること。 高価な作成ソフトで、素材の質感、陰影のリアリティー等、深く追求して、他との差別化をはかる。ただゼネコン や大企業のCG作成チームは、すでにおそろしいクオリティーなので、個人ではちょっときついかも。

で、僕のように個人でなんとかやっている人が、受注を増やすにはどうすれば良いのでしょうか? CGソフトだけでは表現出来ない、個性的なパースを作成することしか差別化の方法はないようです(営業力はもっと大事でしょうが)。手描きの場合は、放っておいても描き手の個性は出ますが、CGではなかなか難しくて大変なのです。

からす

まず最初に、その案件のコンセプトに添った物語を明確にイメージし、それを着地点として、アングルや陽の差す方向、季節感、地域性等を考慮しながらレンダリングします。それをどの ように演出するのかが一番大事な所。

画像加工ソフト(Photoshop等)で、その着地点に向けて加工して行きます。一番注目してもらいたい部分が目立つ様に、彩度、明度、フォーカスの調整やそうでない所の処理、イメージにあった各添景の貼付けの作業等、その制作者なりの工夫で簡単には作れないオリジナルな空気感を加味していきます。 僕は、各ディティールのデザインも 含めてのパース作成が多いのですが、ある程度のデザインセンスがあれば、それも大きな武器になるはずです。

からす

CGソフトの進歩も凄まじく今後どう変化して行くかわからないのですが(どのジャンルもそう)、やはりCGソフトだけでは制作不可能な部分で差別化をはかる事しか、今の所ないようですね。

からす

猿でも描けるCGパースから、プロとして通用するレベルにどこまで進化出来るか。僕もまだまだ発展途上の段階なので、楽しみながら出来るだけ長く仕事が出来ればと思っています。

おしまい