ボブディランにノーベル文学賞! そして誰も知らない、あがた森魚。

あがた森魚

ボブディランのノーベル文学賞受賞で、巷では賛否両論入り乱れておりますが、ボブディランから始まった 日本のフォークシンガーの中で、40年以上にも渡って最も詩情豊かな吟遊詩人であり続けた人は、あがた森魚ただ一人です。(独断で断言)

もし、あがた森魚をご存知の方がおられたとしても、知っている曲といえば、おそらくこの一曲だけでしょう。

《赤色エレジー》

1972年(大阪万博の2年後)長髪と下駄とジーパンのいでたちで、ギター片手に当時の音楽番組にむさ苦しく 現れ、地味に、貧しく、陰気に歌い上げ帰って行く。それがあがた森魚のセンセーショナルな登場でした。 当時の漫画雑誌「ガロ」に連載されていた林静一の「赤色エレジー」にインスパイアーされて、頼まれてもいないのに、あがた森魚が勝手に作った曲、それがこの歌でした。

からす

約60万枚を売り上げた大ヒット曲なので、僕の同年代の方は、記憶にはあることと思います。いわゆるメジャ ーの表舞台に躍り出たのは、この時が最初で最後だったので、多くの方は典型的な一発屋の認識でしょう。 しかしその後も、時代を先取りする数々のコンセプトアルバムを発表し、その筋の人たち(どの筋や)には、 今に至るまで絶大なる人気を誇っています。

からす

当初は、ボブディランの影響からシンガーソングライターになったのでしょうが、日本的ノスタルジーを軸足 とした、繊細で独特な感受性の発露で、信じられない程の美しさと、郷愁を誘う楽曲を発表し続けています。

微妙にフラットしながら独特にシャウトするその歌唱法は、まさにオンリーワンで、評価の分かれる所でしょう が、僕は大好きでジュンときてしまいます。

からす

いちばん大好きなアルバムといえば、ダントツでこの一枚「永遠の遠国」 当時売り上げが見込めないとのレコード会社の判断で自主制作の限定版となっています。 小説家・稲垣足穂の世界観をそのまま音楽に置き換えた様なアルバムで、すべての曲が最高のクオリティーです。

いい曲だらけなのですが特に大好きな曲は、「いとしの第六惑星」「春の嵐の夜の手品師」「永遠の遠国のうた」 「水晶になりたい」「スターカッスル星の夜の爆発」等です。

モラトリアムにハマり込みがちで、社会生活に戻れなくなってしまいそうな世界観ですが、この感受性は生涯捨てたくはありません。

からす

異色のアルバムとしては、全曲カバーアルバムの「イミテーション・ゴールド」 アレンジに細野晴臣などの本格派が参加しており、なんかよく解らんカオスの世界で、色々な意味で衝撃的なアルバムです。 「恋のバカンス」「サイレント・イヴ」「禁区」等は、オリジナルとは全く異なる世界観で、一度聞いたら癖になり耳からは慣れません。(もう原曲には戻れない)

ライヴでの、アドリヴでノリノリでシャウトする様はちょっと異様で怖い(ゴメンナサイ)のですが、感性の赴く ままに生き抜かれている様は、とても真似出来るものではなく、尊敬に値します。

最後に、元ちとせとのコラボ、「百合コレクション」も素敵ですね。

おしまい