舞台美術、映像、照明、音響、出演交渉、そして総合演出のすべてにおいて《NHK》様の本気を見させていただきました。総合司会の芸人・内村光良の底力。そして白組司会の嵐・櫻井翔の対応力。噛もうが間違えようが、にっこり笑ってただ立っているだけでOKな広瀬すずちゃん。久しぶりに《紅白歌合戦》を観て幸せな気分を味わえました!
日本の大みそかの風物詩《NHK紅白歌合戦》。毎年嵐のメンバーが白組司会者に選出されるため、嵐ファンのうちのかみさんがテレビに噛り付くように見ているのをよそに、僕は今年も格闘技三昧! ボクシングや総合格闘技を十分に堪能しながら過ごしました。
年明けの深夜、いつもの様に近所の氏神様の神社に初詣の道すがら、「今年の紅白は面白かった!」「当たり前のように翔ちゃんの司会は最高やったやけど、演出が素晴らしかった!」「騙されたと思って最初からちゃんと観たほうがい!」などと、しつこく僕にまくしたてるものだから、初詣の感謝のお参りの最中も、かみさんの興奮した「今年の紅白は面白かった!」の声がまとわりつきます。 氏神様ごめんなさい。
帰宅後、そんなに言うのならと録画していた《NHK紅白歌合戦》を大した期待もしないまま半信半疑で見始めたのです。
オープニングは昨年のミュージカル仕立てのものが素晴らしかったので、今回はそれほどではなかったのですが、紅組しょっぱなの坂本冬美の《夜桜お七》から圧倒されます。
バックダンサーと、その振り付けも素晴らしく、コテコテの演歌との融合が楽しかった。このブログでも常々語っているのですが、「凄まじい歌唱力を持った演歌歌手を十分にリスペクトした上で、今の時代に通じる斬新な演出を施せば、演歌の素晴らしさを再認識させられる」をキッチリやってくれていたのです。
そして白組・郷ひろみ! 《GOLDFINGER´99》のアチチに乗せて、今年一年の出来事をそれぞれのそっくりさんがミュージカル仕立てのパフォーマンスで盛り上げます! そのパフォーマンスを縫うように移動しながら歌い上げるヒロミ郷! その演出は郷ひろみの素晴らしさを十分引き出します。
更には紅組・丘みどり。
横綱の注連縄みたいな帯を巻いて《鳰の湖》を熱唱! あんた誰や?感は多少あるものの、それを打ち消すほどの歌唱力! その熱唱に負けず劣らずの美しい踊りを披露してくれたのは元新体操・フェアリー ジャパンの畠山愛理 ! これほどの美しいダンスパフォーマンスはこの人しか出来ません、もっともっといろいろな機会で披露していただきたいものです。
総合司会・内村光良の力量は去年の紅白でみせしめていたのですが、今回も八面六臂の大活躍! 更に今回一番驚いたのは、嵐・櫻井翔のMCの実力!
かみさんが毎回見ている《news zero》の櫻井翔は時々見ているのでその安定感は認めていたものの、今回、MCとしての総合力に脱帽したのです。紅白出場歌手は皆さん緊張し、浮足立っているのですが、司会者も緊張していると余計に力んでしまうもの。しかしながら、櫻井翔の司会ぶりは、終始リラックスしており、声のトーンや話のスピード、そしてその佇まいの安心感は、全ての出場歌手の皆さんを落ち着かせ、リラックスしてパフォーマンスできるように送り出していたように見えたのです。
芸人と同様、アイドルはその場の空気感を瞬時に読み取り、瞬時に対応、反応していく能力を要求されます。 バラエティーやニュース番組等で、長い年月をかけて培ったその能力は、アイドルグループ嵐・櫻井翔の枠を大きく超えて、比類なきMC力を紅白歌合戦の司会者として見せつけました。 内村光良との相性も抜群で、だからこそ広瀬すずちゃんが多少ミスっても「いいの。いいの、可愛いから。」と許せてしまうのです。
僕的に、前半戦一番のハイライトは、Suchmos《VOLT-AGE》
このグループ、この曲、痺れました。 どちらかといえば、アシットジャス系の音なのですが、秘めた熱量が節々に垣間見れ、新元号となる新時代の音楽を先導していくグループになると確信しました。独特のグルーヴ感の演奏にピッタリはまった、ヴォーカル・YONCEの歌声も素晴らしく、さりげないファッションもその音にシンクロしており、僕個人の今年のテーマ《響き》にドンピシャの曲でした。 Heartbeat! Heartbeat!
そして五木ひろしの《VIVA・LA・VIDA!》はよかったですね、これ、《よこはま・たそがれ》へのオマージュなのでしょうか? DA・PUNPとのコラボもこの曲調とピッタリで素晴らしかったのですが、白組、次の曲が《U・S・A》だったので、ちょっと割を食った感じになったのでは…。
島津亜矢さんは、昨年の《The Rose》が素晴らしすぎたので、今回の《時代》はちょっと選曲が……?な感じでした。 久々のいきものがかりの《じょいふる》はやっぱりすごい曲!会場全体を盛り上げました。
AKB48は、今年卒業する指原莉乃をセンターに、僕の大好きな《恋するフォーチュンクッキー》を歌ってくれました。バンコク・BNK48とのコラボも初々しくてよかったですね。 欅坂46は平手友梨奈が欠場、残念でした。
そして松田聖子の登場。
若いころの歌声と比べ、落ち着きと哀愁が加味され(少しキーを下げた?)、より耳障りが良くなりました。数々の素晴らしい楽曲は、歌手・松田聖子の財産ですね。
白組は朝ドラ《半分、青い。》の主題歌《アイデア》を歌う星野源。この歌、朝ドラでは途中までしか聴けなかったのですが、フルで聴くと更にいい曲だとわかります。ゲスト審査員の《岐阜の山猿》永野芽郁ちゃん、感激して涙ぐんでおりました。
紅組・白組関係のないスペシャルパフォーマンスで登場したのは、平成最後の《まつり》を歌う、北島三郎!!
さすがに全盛期の声量は望むべくもなかったのですが、NHKの出演要請に快諾してくれた男、サブちゃん!! 出演者総出で歌い踊り、制作スタッフと出演者全員のサブちゃんへの最大のリスペクトを感じ、幸せな気分にさせてくれました。
更には猛獣使い・椎名林檎と、その猛獣・エレカシ宮本浩次のスペシャルパフォーマンス《獣ゆく細道》! 椎名林檎の掌の上で歌い狂う猛獣・宮本浩次、渾身のパフォーマンスでした!
ここまでで既におなか一杯感はあったのですが、ここからラストへのたたみかけは凄まじいばかり! NHKが社運をかけて出演交渉した末、別会場での出演で交渉成立した大御所・松任谷由実のスペシャルメドレーが始まります。
途中からNHKホールのステージに登場するくだりで、皆が驚いていたシーンは、「知っとったやろーーーッ!!」ととりあえずツッコんでおきました。
デビューから45年以上のキャリアの中、数々のヒットを飛ばしたレジェンドなのですが、最終的にファンが聴きたい曲のほとんどが、荒井由実時代のもの。僕も荒井由実の最初のベストアルバム《YUMING BRAND》は大好きで、中でも《翳りゆく部屋》は死ぬほど好きでした。ただ、今回のパフォーマンスは、ちょっと歌声が上ずっており、ご自身も満足するパフォーマンスではなかったのではないでしょうか(もしかして上がっていた?)。
そしてとても感動したのは《Lemon》を初めて生歌で歌った米津玄師! 中継地の徳島県《大塚国際美術館》の壁画や蝋燭の幻想的な演出も相まって、最高に説得力のあるパフォーマンスを見せてくれました。テクニックよりなにより、その気持ちのこもった熱唱は、良い意味で期待を裏切ってくれ、一気にファンになりました。
更にさらに圧倒的かつ完ぺきな歌唱力を見せつけてくれた平成の歌姫、奇跡の5オクターブ・MISIA! もう、凄いとしか言いようがない! あの小さな体からほとばしる溢れんばかりのエモーション! 福岡が生んだ日本音楽界の宝!
同じく紅組のトリを務めます演歌の大御所・石川さゆり。 今年も紅白定番の《天城越え》だったのですが、今回は布袋寅泰のギターとのスペシャルコラボ! いやーーーっ、布袋さんのギター、素晴らしかった! 石川さゆりのド演歌をより引き立て、尚且つ自身の個性も存分に発揮した今回のパフォーマンスは、このブログでも何度も提唱している《ネオ昭和歌謡》のお手本。
演者をリスペクトしたうえで、双方が引き立つコラボを真剣に作り上げると、今の時代でも演歌は十分に通用するのです!
そして白組のトリを務めるのは嵐。紅白の嵐は毎年スペシャルメドレーを披露。たいした舞台装置もなく、白のスーツを着た5人のメンバーが淡々と歌います。今回に限ったことではないのですが、嵐のユニゾンは、優しくて切なくて救いがあって美しい! ベースになっている大野智の声質に漂う哀愁が、観衆にたいして《救い》のメッセージを送っているのでしょう。
他のジャニーズグループには絶対に表現できない、この自然発生的な《救い》の波動は、メンバー5人のユニゾンとなって更に深く広く観衆に響きます。
この浄化作用こそが、国民的アイドルたる所以なのでしょう。
もうここまでで本当におなか一杯! もう何にも食べれません状態で、な、なんと最後は、スペシャルディナー•サザンオールスターズの登場なのです!
桑田佳祐、一時は闘病で声量や弱まり、歌声も力が入らない時期もあったのでしょうが、ここの所体調も良さそうで、さすがのパフォーマンスを披露!最後は《渚のシンドバット》の演奏で会場全体をノリに乗せ、出演者全員がステージに集まります。サブちゃんもユーミンも、ウッチャンも翔君も、すずちゃんも桑子 アナも、その他全員が笑顔で大団円を迎えます。
ユーミンからラスト、サザンオールスターズまでの怒涛のたたみかけは圧巻で、近年まれにみる盛り上がり。久しぶりに紅白を観て幸せにさせていただきました。
当ブログで毎年、近年の紅白歌合戦にたいしてあーだこーだ言ってきた僕なのですが、ここに謝罪いたします。
NHK様、申し訳ありませんでした! そしてお見事でした!
様々な出来事があった平成の時代の日本を浄化する作用が 今年の紅白歌合戦のイベントには、少なからずあったのではないでしょうか?
やはり大衆に支持される歌の力を侮ってはいけません!
作り手が演者すべてをリスペクトし、考え尽くした末の演出、コラボ。さらには舞台美術、照明、映像、音響のすべてにわたって真剣に提案すれば、アーティストが本気にならないわけがないのです。スタッフを含めたそれぞれのスペシャリストの真剣度はテレビ画面から確実に伝わってくるのです。
他のメディア(ユーチューブやネットTVなど)に押され気味、加えてスポンサーやプロダクションに忖度した自主規制等で、最初から諦めた態度で番組を制作している様子の各民放のTVマンの皆様。
諦めるのはまだ早い!
今回の紅白歌合戦の画面から伝わってくる熱量は、他のメディアでは絶対に作れない、地上波独自のもの。
新時代のテレビの可能性の見出すヒントは、ここにあるのではないでしょうか?