僕達を救ってくれた珠玉のフォークソング⑤ 吉田拓郎《落陽》 東から西へ進む船舶から望む落陽に、明日への希望はあるのか?

吉田拓郎・落葉

吉田拓郎、32枚目のシングル曲。水平線に沈む夕日に向かって歌う仕切り直しの人生に、明日はあるのか? 作詞家・岡本おさみの紡ぐ哀愁の物語は、「今の君の生き方に嘘はないか?」と問いかけます。 そ、そしてなんと、あの総合格闘家・扇久保博正選手の入場曲でもあるのです!!(誰も知らないだろうけど…)


はい、ご無沙汰しております。

お久しぶりでございます。
 
(ループ量子重力理論)カルロ・ロヴェッリ《時間は存在しない》という本が面白すぎて、《時間》をテーマにブログを書こうとしたのは良いが、まったくまとまらず、頭がボヤ―っとしているうちに早や三か月。 

カルロ・ロヴェッリのオッサンのことはすっかり投げ出してしまい、 久しぶりの記事の内容が、このブログではアクセス数のもっとも少ない格闘技関連のお話。 

更には格闘技イベント《RIZIN》には出場しているものの、世間的にはマイナーな総合格闘家・扇久保博正選手を 友達でも知り合いでもないわたくしが、勝手に無責任に語ってみようと思い立ちます (何故だ!)。 

で、この選手の入場曲が、なぜか僕の大好きな吉田拓郎の《落陽》なのであります。

からす


まずは吉田拓郎の名曲《落陽》から。


しぼったばかりの夕陽の赤が 水平線からもれている

苫小牧発・仙台行きフェリー

あのじいさんときたら わざわざ見送ってくれたよ

おまけにテープをひろってね 女の子みたいにさ

みやげにもらったサイコロふたつ 手の中でふれば

また振り出しに戻る旅に 陽が沈んでゆく



今から50年ほど前にリリースされたフォークシンガー吉田拓郎のロックテイスト満載なイントロギターの響きが印象的な大ヒット曲。
僕よりもひと世代上の、70年安保闘争に明け暮れた、いわゆる《団塊の世代》と言われた人達は、《東大安田講堂事件》《あさま山荘事件》等を経て、命を懸けた革命運動をあきらめざるを得ず、敗北感、無力感に襲われた日々を過ごしていました。 

そんな当時の空気感の中、北海道を放浪していた作詞家の岡本おさみが出逢った、ギャンブラーの爺さんとのエピソードを詞にしたのがこの歌でした。
この曲は、政府との安保闘争に敗れ、行き場を失った当時の若者の心情にピッタリとシンクロしたのでしょう。

苫小牧から仙台へ

東から西に向かって、ふりだしに戻る旅人の眼前には水平線に沈みゆく夕日。その絞ったばかりの、海面にこぼれゆく真っ赤な血潮を眺めながら、今まで信じてきた真実とは《何か?》 正義とは《何か?》 そして本物の愛とは《何か?》 を自分自身に問い、いま一度ふりだしに戻って、その様々な《何か?》を探す旅に明日はあるのか? を歌っているように僕には聴こえてくるのです。

吉田拓郎の歌は、その時代を生きる者たちがしっかり共感できる歌詞が多く、それゆえ未だに色褪せることのない輝きを放つのでしょう。

からす



で、総合格闘家・扇久保博正選手のお話。

はっきり言って、格闘家にとっては縁起でもない詞の内容の吉田拓郎《落陽》を入場曲に選ぶ扇久保博正のセンスは、いかがなものでしょうか?


♪みやげにもらったサイコロふたつ
手の中でふれば
また振り出しに戻る旅に 陽が沈んでゆく


振り出しに戻るんかいっ! 
陽が沈んだらあかんやろっ! 
と、思わず突っ込みたくなります。


♪だからこうして漂うだけ

漂うなよっ! 
地に足をしっかり着けてがんばれよっ! 
と、思わず突っ込みたくなります。


♪身を持ちくずしちまった
男の話を聞かせてよサイコロころがして


身を持ちくずしてしまうんかいっ! 
と、思わず突っ込みたくなります。

からす


この人、ウィキペディアによりますと現在33歳とありますので、《落陽》のリリースから15年も後に生まれているのです。にもかかわらず何故にこの曲を入場曲に。 出身地東北岩手から東京に、西に向かって落陽の景色を眺めながら上京して来たときの、自身の心情にこの曲を重ね合わせたからなのか…。

時々この人のYouTube《おぎちゃんねる》を覗いているのですが、この年代では珍しく吉田拓郎の大ファンであるらしく、《落陽》《人生を語らず》《ファイト》《祭りのあと》なんかをギターの弾き語りでカバーしたものをアップしております。 このへったくそ… いや味のある弾き語りを聴きながら総合格闘家・扇久保博正選手のお話を少し。

からす


今をときめく朝倉兄弟那須川天心堀口恭司などをスターダムに押し上げた格闘技イベント団体《RIZIN》《PRIDE》の夢をもう一度と、スター選手たちが凌ぎを削って闘っております。

そのスター選手たちの影に隠れながらも、いぶし銀の魅力を放つライジンファイターの実力者、我らが扇久保博正選手! 

極真空手出身で、老舗総合格闘技団体《修斗》(初代タイガーマスク・佐山聡の立ち上げた団体)でアマチュアから叩き上げ、地道に修練を重ね、《修斗世界フェザー級》《修斗世界フライ級王座》の2階級を制覇。 その後、UFCファイターとなった同じ《修斗》出身の堀口恭選手を追って、UFCに挑戦。 

アメリカのリアリティ番組「The Ultimate Fighter」に参加し、決勝まで進むも判定負けを喫し準優勝となります。 ここで優勝していれば、またインパクトのある派手な闘いをしていれば、晴れてUFCファイターとしてメジャーに躍り出ていたはずだったのですが…、

そこは落陽ファイター・扇久保博正、サイコロの目はふりだしと出てしまいます。

傷心の落陽ファイター・扇久保博正、水平線に沈む夕日を眺め泣きぬれながら帰国。ここで更なる試練が襲います。様々な事情から愛する妻から離婚を切り出され、お子さんとも離れ離れとなってしまいます。

落陽ファイター・扇久保博正、夕日に向かって号泣! 落陽ファイター、最大の試練です。

しかし、吉田拓郎が何度も立ち上がったように、落陽ファイター・扇久保博正は負けません! もう一度自分を信じることから始めるのです。 

心身ともに立て直し、古巣《修斗》での試合を経て、格闘技イベント団体《RIZIN》から待望のオファーが来ます。 そしてその対戦相手が、《修斗》時代からの宿敵、元UFCファイター・堀口恭二選手。 修斗時代の敗戦の借りを返す千載一遇のチャンス!満を持して闘いに挑みます。 ここで現在《RIZIN》のスーパースターとなった堀口恭選手を倒せば、一躍《RIZIN》の看板選手となり得たのですが…。
 
そこは落陽ファイター・扇久保博正、サイコロの目は再びふりだしと出てしまいます。 そして夕日に向かって再び泣きぬれます。

それでも実力者の扇久保博正選手、ライジンバンタム級四天王と謳われ、その他の四天王・元谷友貴選手、石渡伸太郎選手との二連戦を 2-1のスピリット判定で勝ち上がります。 

特に石渡伸太郎選手との激戦は、《RIZIN》史上一、二を争うほどの名勝負で、それまでも好みの選手だった扇久保博正選手をより以上に好きになった試合でした。 

意地の張り合い、我慢比べ、泥臭いスタミナ勝負に持ち込んだ時の扇久保博正選手の放つ格闘家としての色気は筆舌に尽くしがたく、メジャーなスター選手には到底出せない、落陽ファイター・扇久保博正だけが映し出す夕焼けの美しさを僕たちに魅せてくれるのです。


そしてその戦績を認められ、いよいよ《RIZINバンタム級王座決定戦》のチャンスに恵まれます。 

その対戦相手は、宿敵堀口恭司をKOで破って、格闘家としても今や飛ぶ鳥を落とす勢いの朝倉兄弟の弟・若きストライカー朝倉海選手

いまやYouTubeチャンネルも、登録者数 79.5万人を誇る大人気ユーチューバー。チャンネル登録者数 1.3万人の《おぎちゃんねる》と比べるべくもありません!

それでも僕は、この戦いに勝って《RIZINバンタム級王座》のベルトを腰に巻き満面の笑みを浮かべる扇久保博正選手をイメージして固唾をのんで観戦した決定戦!

はい、そこは落陽ファイター・扇久保博正、サイコロの目は、みたびふりだしと出てしまいます。

1R 4:31  サッカーボールキックにてTKO負け…。 そして夕日に向かって、みたび泣きぬれます。 

しかしながら不屈の根性の持ち主、扇久保博正。一度は折れかけた心をなんとか立て直し、先日行われた《RIZIN.25》での再起戦、ストライカー・瀧澤謙太選手を圧倒し判定勝利をもぎ取り、首の皮一枚つなげます。

からす

 
幾度となく、サイコロを振ってはふりだしに戻り夕日に向かって涙する、落陽ファイター・扇久保博正

しかしながらそのたびに格闘家としての深み、厚み、重さを増してゆき、何度も何度も美しい夕焼けを魅せてくれる、落陽ファイター・扇久保博正

朝日のように光り輝く令和のスター選手に隠れながらも、唯一昭和の匂いを醸し出す、落陽ファイター・扇久保博正

実力者なのに、何度もスターになるきっかけを逃してしまっている落陽ファイター・扇久保博正

もうこうなったら意地でも入場曲は《落陽》で貫き通し、何度ふりだしに戻ろうとも、何度夕日に向かって泣きぬれようとも、今後もその闘う姿を通して、僕達により美しい夕焼けの大空を魅せてくれ!!

そう、人は朝焼けの景色よりも、哀愁の夕焼けの景色のほうが何倍も大好きなのだから…。 

それでもいつの日にか、扇久保博正陽はまた昇る。
その時こそは、落陽でななく日本一美しい朝陽の輝きを僕たちに見せてくれ

そしてみんなで叫ぼう!!


アッパレ扇久保! 


ハレルヤ扇久保!

おしまい