のぞきからくりムービー②《銀の月》(試作) 太陽は人の身体をつくり、月は人の心をつくる。

銀の月

黒く深い川に架かる古い木橋。その木橋のこちら側とあちら側では、太陽の光も色も吹いている風も、まるで異なります。しかし、日が暮れて、東の空に月が昇る頃、そう、見えていたものが見えなくなり、見えなかったものが見えてくるその時刻、月の光は、八百万(やおよろず)の物語を黒い川面に映し出すのです。

若い頃、何を思ったか《銀の月》なる詩を作ってしまい、それに曲が付き物語が生まれ、演劇として形になったことがありました。その時に残された音源を元に、フォトショップのGIF機能で、イラストのイメージ動画を作ってみました。

からす

橋のこちら側に住む、小説家志願の太一という少年は、毎夜その橋の上で川面に映る月を眺めながら、様々な物語を創作していました。ある日、橋のあちら側から月子という少女が太一の前に現れます。何度も逢ううちに太一は、創作した物語を月子に聴かせるようになるのです。一番最初の聴き手である月子の楽しげな反応に気を良くした太一は、、毎晩のように出来たばかりの物語を情感たっぷりに話します。

太一の物語を毎晩聴いているうちに月子は、川面いっぱいのスクリーンに、その物語が映像として見えるようになるのです。

まるで月あかりの幻灯機で映し出されたムービーのように…。

しかしある日を境に、太一は姿を見せなくなります。太一を待ち望む月子は、橋の向こうに逢いに行きたいのだけれど、橋を渡ることを硬く禁じられている村の掟に阻まれます。

時が経ち、青年となった太一は作家になる為、都会へ旅立ちます。それを感じ取った月子は、都会に向かう太一の乗った川沿いに走る夜汽車を一生懸命に追いかけるのです。

走って、走って、走って、走って…。 そのうちに護岸の草むらに足を取られ、その身体は黒く深い川に投げ出されてしまうのです。薄れ行く意識の中で月子が観た最後の映像は……、

月子の想いの丈の波紋が、川面の月を粉々に砕き、それは銀の砂となってキラキラと天へ舞い上がり、そして夜空に広がる銀河の宇宙となったのです。

からす

のぞきからくりムービー②《銀の月》(試作) 

よかったら覗いてみて下さい。

おしまい