勝てる見込みのない大国アメリカに、玉砕覚悟で喧嘩を売った小国ニッポン。そんな大戦の最中、能天気でバカ陽気なブギウギを引っ提げて、歌と踊りで連合軍の慰問に飛びまわっていたアンドリュース・シスターズ。 一方「欲しがりません勝つまでは!」「鬼畜米英!」と叫びながら、進め一億火の玉となっていたニッポン。 どの時代においても、思想の多様性を認めず、エンターテーメントを忘れた国に輝く未来は訪れないのでしょう。
あっという間の四ヵ月。
前々回の記事、中島みゆき《ホームにて》を書いた後、手のひらに残った白い煙と乗車券をボーっと見つめているうちに、ふと気が付けばもうすぐ十一月。 今年もなーーんもせんで終わってしまう……。
光陰矢の如しと申しますが、還暦過ぎたジジィにとっては年々その速さが加速度的に増しているように感じられ、つい三か月程前にお正月を迎えたような時間感覚。前回のジュリーライヴの記事も、去年の観戦記事を書いてからもう一年が経過しているとは…。
しかしながら、こんな老いぼれジジィの時間感覚とは裏腹に、世界情勢はお構いなしに刻々と変化してゆき、香港では、赤い悪魔《中国共産党》のなりふり構わぬ同化政策に勇敢に立ち向かってる、学生や市民達の大規模なデモが行われており、中国共産党との戦いは今まさに佳境に入っているところ。 明日は我が身と恐れる台湾国民も戦々恐々と見守っているところでしょう。
また、経済戦争真っただ中のアメリカと中国。その動向を見つめる周辺諸国の思惑も複雑に絡み合い、世界経済の動向も予断を許しません。
さらに、日韓関係は戦後最悪と言われるほどにこじれにこじれ、嫌韓と反日の怒気が両国間の間で渦巻いております。
世界中の人々が右派チーム左派チームにはっきり色分けされ罵詈雑言の飛び交う昨今、その刃はより鋭利に研ぎ澄まされながら、瞬時にインターネットやSNSを通して全世界の人々の心に突き刺さります。
そこで、
それぞれの言い分はいったん棚の上に全部乗せて心を落ち着かせ、最高のエンターテーメント《ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ》の聴き比べをしてみませんか?
わかってます、わかってますって! なんの関係もないのは百も承知。だから怒らないで、騙されたと思って聴いてみてくださいよお客さ~~んっ。
令和の時代、怒りからは破壊しか生まれません。心を穏やかにして口角をあげて、まずは笑顔から始めてみましょうよぉ、お客さ~~んっ。
アンドリュース・シスターズ《ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ》は、太平洋戦争開戦間際の1941年1月にリリース。 第二次世界大戦の最中、ヒットラーがヨーロッパで大暴れをしている頃、参戦のまじかのアメリカ全土で、この能天気なスッカスカのブギウギサウンドが大ヒット!
この出来事一つとっても、竹槍を持って「進め一億火の玉だぁ!」と煽りまくっていた当時のメディア(特に朝日新聞!)に乗せられ、戦争(殺し合い)に突き進んでいた日本が、圧倒的な経済・軍事大国アメリカに勝てるわけはなかったのです。
まだアメリカ建国時の先住民大虐殺の所業で、大地深くに沈んでいたドス黒く巨大な怨念が噴出す前の、虚構で固められたエンターテナーが全盛を誇っていた1940年代~1950年代。 当時流行したのバカ陽気なMGMミュージカルやアメリカンポップスが大好きだった僕 (さすがにリアルタイムではありません) なのですが、中でも当時の三声のバックコーラスが大好物で、これを聴くと今でもとろけてしまいそうになるのです。
そこでアンドリュース・シスターズ!
当時全米での人気は大変なもので、第二次世界大戦中にはヨーロッパの連合軍将兵達の慰問で世界を飛び回っていたそう。 この三姉妹を世に送り出した最大のヒット曲は、誰もが知るジャズのスタンダードナンバー《素敵なあなた》。
「わしはそんなの知らん!」と不貞腐れている素敵なあなた、聴けば絶対にどこかで耳にしており「あっ!知っとるしっとる!」となるはず。
どうですか? 聴いたことがあるでしょう(若い方は知らないかも)。この歌の元曲は、1932年にイディッシュ語のミュージカルでの挿入歌で、原題は《Bei Mir Bistu Shein》。 ところでイディッシュ語って何?
それはさておきスイングジャズの全盛期、その軽快で明るいビックバンドサウンドをバックに、今では誰もが知るスタンダードナンバーのダンスミュージックを歌いまくり、ハモリまくるアンドリュース・シスターズ!
当時のミュージシャンは皆そうだったのですが、誰もがエンターテナーで芝居心とコメディアン気質を兼ね備えており、この三姉妹も例外ではありません。 ステージを観ているだけで、とにかく理屈抜きで嬉しい、楽しい、気持ちいい!
まさしくアメリカンかしまし娘!
で、元に戻って《ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ》
シカゴからやってきた有名なラッパ吹きの少年が、今では軍隊に入って起床ラッパを吹いている。夜はバーでブギウギのリズムでラッパを吹きならす。隊員達は皆バーへと飛んでいく。彼が起床ラッパを吹けば、みんなはすぐに飛び起きる! 彼はB隊のブギウギラッパ少年。
ただ単に、ムードメーカーのブギウギラッパ少年を歌っている内容スカスカのブギウギなのですが、当時のビックバンドジャズのアレンジで歌われると、思わず踊りたくなるのです。
この曲はありとあらゆるミュージシャンがカバーしているのですが、今回は僕がYouTubeで見つけ、厳選した7つのカヴァー。綺麗なお姉さん達が歌い踊る、とにかく底抜けに楽しく嬉しくなるパフォーマンス映像をご紹介。強引すぎて色々とご不満もございましょうが…、
四の五の言わずに黙って聴きやが……、お、お願いだから聴いて頂戴。
①《アンドリュース・シスターズ》
そう、最初はもちろんオリジナル、アンドリュース・シスターズの登場!
この映像はミュージカル映画からのワンシーンで、なんの映画なのかは知らないのですが(知らんのかい!)、アンドリュース・シスターズ三姉妹の、パフォーマーとしてのスキルの高さが垣間見れるもの。 センターは、コミカルで愛嬌抜群、メロディー担当・三女パッティ。向かって左手は高音担当・次女マクシーン。そして向かって右は低音担当・長女ラヴァーン。
この三姉妹の織り成す美しいハーモニーは、1オクターブの音域の中に収まるクローズ・ハーモニーというそうで、当時のミュージカルではそのほとんどがクローズ・ハーモニー。このどストレートな美しさは、理屈抜きに心地よく、身も心もとろけそう。 センターの三女パッティは後にソロとなり、94歳で天寿を全うするまで歌い続けたそうです。
それでは、元祖・アメリカンうちら陽気なかしまし娘、アンドリュース・シスターズの《ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ》をお聴きください!
②《The Langley Sisters》
イギリスはロンドン出身のユニット、ザ・ランジェリーシスターズ。 もう名前からしてエロいのを想像してしまう、どうしょうもないジジィなのですが、これは読み間違いで本当はザ・ラングレーシスターズというイギリスの三姉妹。
この映像がランジェリーっぽいドレスなので、ザ・ランジェリーシスターズと読み間違えたも仕方がないというもの。っていうかこっちのほうがインパクトあるのに…。
ガサツなヤンキー娘とは違って、こちらは気品とお色気たっぷりの妖艶な三姉妹。アップで見ると本当によく似た姉妹。歌終わり、センターのお姉さんのウインクで悩殺された僕でした。
③《Honey Bee Trio》
アンドリュース・シスターズから半世紀以上の時を越えて、アメリカに現れたピチピチ10代の三人娘、ハニー・ビー・トリオ!
もう、可愛いの可愛くないのって可愛いの?可愛くないの? そう、無茶苦茶かわいいのーーーーっ! と、羽目を外してしまうほど。 ヤンキー娘なのだけれど、けっして下衆っぽくなくどこか気品を感じるのです。
しかし若い娘の満面の笑顔は、それだけで世の中をハッピーにしてくれます。
④《THE SATIN DOLLZ》
ジャズのスタンダード曲《サテンドール》からとったグループ名、ザ・サテン・ドールズ。
アメリカはハリウッドを拠点としたガールズグループ。この映像では四人編成なのだけれど、メンバーはもっと沢山在籍しているボリュームたっぷりなエンターテーメント集団。ノスタルジックなイメージを残しながらも後半はミュージカルっぽいアレンジで僕たちを楽しませてくれます。
⑤《Trío Ladies》
チリはサンティアゴ出身のラテン三人娘。もう、ガンガン前に迫ってくるような底抜けに明るいラテン系ユニット。今日楽しければ先のことなどケセラセラ!
とにかく今を楽しみましょうの能天気なスタンス。身体だけではなく、顔で歌って踊っているような大迫力の顔面! 目も鼻も口も、パーツというパーツ、すべてがデカい! しかしながらそのスタイルは元祖アンドリュース・シスターズを忠実に再現しており、終始コミカルなパフォーマンスは僕的にはどストライク!
やはり今の時代、ラテンが一番!
⑥《Bette Midler 》
アメリカが生んだ稀代のエンターテナー・ベット・ミドラー。
この人はデビュー当時からこの曲を十八番としており、その都度様々な演出で何度もステージで披露しております。 この映像は、テレビのバラエティーショーかなにかで、一人三役、合成画像と多重録音で踊って歌っております。
ベット・ミドラーの歌声はいつ聴いても最高! 当時はこんなに痩せているのに歌声もダンスも最高なのです。ベット・ミドラー渾身のパフォーマンスを見逃すな!
⑦《ザ・ピーナッツ》
しんがりは、日本が誇る双子の歌姫、ザ・ピーナッツの登場です。 この映像はザ・ピーナッツ引退の年、最後の紅白歌合戦のステージ。
ピーナッツがもっとも得意とするスイングジャズを披露(デビュー曲もジャズのカヴァー)! 《ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ》を原曲よりもテンポアップし、華やかなバックダンサーを従えたエレガンスでキッレキレのダンスパフォーマンス。 そしてザ・ピーナッツ独特の迫力満点のハーモニー! 凄まじい完成度!圧巻のエンターテーメント。
オーケストラピットでノリノリでタクトを振り回しているのは、作曲家・宮川泰 。ピーナッツ一連のヒット曲を作曲した立役者。
日本で、これほどまでの完成度で歌って踊れる女性シンガーは未だに現れていません。 これを最後に引退とは、いやーーっ、もったいない!!
如何でしたでしょうか? 《ブギ・ウギ・ビューグル・ボーイ》聴き比べ観比べ7選。
ギスギス感漂う今の世の中、無理やりにでも自分自身で嬉し楽しい雰囲気を演出し笑顔で世の中渡ってゆけば、得はあっても損はなし!
皆さん! 自分の機嫌は自分で取りましょう!! (Byみやぞん)