M-1グランプリ2019チャンピオン《ミルクボーイ》 コーンフレークをイジリ倒した角刈りとマッチョの織り成す、最強の《リターン漫才》

ミルクボーイ1

漫才界世紀の大発明《リターン漫才》。どんなテーマも、このひな形(テンプレート)に落とし込めば爆笑漫才間違いなし! 12年間埋もれていた《ミルクボーイ》は、何の前触れもなく(漫才師の間では話題になっていたらしい)、いきなりM-1グランプリ決勝戦のひのき舞台で大爆発! 一夜にして漫才師の頂点に立ちました!


2019年の《M-1グランプリ》は、無名の《ミルクボーイ》優勝という、劇的な結果で幕を閉じました。今回は準決勝を見る暇もなく、いきなり決勝戦を見たのですが、今回こそは、敗者復活で確実に上がってくるであろう《和牛》《かまいたち》だと予想して見ていたところ、まったくノーマークだった《ミルクボーイ》が優勝をかっさらい、びっくり! 

《かまいたち》の漫才も遜色なく最高の出来だったのですが、すでにその芸風が世間に知れ渡っていたことが大きなハンディーとなったようです。でも《かまいたち》はもうすでに売れているから、《ミルクボーイ》の優勝で大正解!

そしてそして、《ミルクボーイ》のリターン漫才は目から鱗の大発明! このひな形(テンプレート)を編み出した《ミルクボーイ》が、今まで世に出ていなかったことが不思議でならないのですが、それは今回優勝するために必要だった《タメ》だったのでしょう。  

からす

あわててYouTubeで過去のネタを見まくったのですが、どのネタもレベルが高く素晴らしかった! また、早速コーンフレークの《ケロッグ》から、公式応援サポーターに任命され、新たなヴァージョンを披露。赤いスカーフを身に着け、コーンフレークに忖度しまくりのこのネタも最高に面白く、尚且つコマーシャルにぴったりだったのです。

自然に商品説明が出来、商品名を連呼できるこのひな形(テンプレート)の 《ミルクボーイ》 の漫才は、コマーシャルにうってつけ! 今後更なる需要が望めること間違いなしでしょう。


で、《ミルクボーイ》のリターン漫才のひな形の素晴らしさに、どうしてもネタを1本考えてみたいという衝動を抑えきれずに、今回恥ずかしながらの挑戦。5分程で読み終えますので、《ミルクボーイ》お二人のお声をイメージしながら、お楽しみ頂けましたら、有難き幸せ。

からす


《演歌》


内海   どぉーもぉ、ども、ミルクボーイです。おねがいしますぅーー。 あーーーねっ、ありがとうございますぅーー、今、炙ったイカを頂きましたけどもね、ありがとうございますぅーーーっ、 こんなんなんぼあっても良いですからねっ、ありがたいですけどもねっ。


駒場   えーー、うちのオカンがね、好きな音楽がある言うんやけど


内海   あーーそうなんやぁ


駒場   その音楽のジャンルの名前をちょっと忘れたらしくてな


内海   自分の好きな音楽のジャンルの名前、わすれてもうて、どうなってんにゃそれ


駒場   色々聞くんやけどな、わからへんねんな


内海   わからへんの? ほな俺がね、オカンの好きな音楽いろいろ考えたげるから、どんな特徴ゆうてたかおしえてみてよぉ


駒場   有線放送でようかかってて、こぶし回して歌う音楽やてゆうねんな


内海   あーーー、演歌やないかい、こぶし回して気持ちよう歌う音楽、完全に演歌やん、すぐわかったやんそんなもん


駒場   でもちょっとわからへんのよな


内海   なにがわからへんのよぉ、演歌やないかい


駒場   俺も演歌と思うたんやけど、オカンがゆうにはビートのきいたノリのいい音楽やてゆうねんな


内海   あーーー、ほな演歌と違うか、演歌はビートのかけらもないもんね、すがるように粘りまくって歌うのが演歌やもんな、演歌にノリなんか誰も求めてないからね、演歌に求められるんは、しつこいこぶし回しと鼻につくほどのビブラートやからね。 そんなもんにビートなんか邪魔なだけやもんね ほな演歌ちゃうがなこれ、ほなもう少し詳しく教えてくれる、うん


駒場
   女性歌手のほぼ全員が信じられへんほどの厚化粧して、苦しそうに歌うらしいねんな


内海   演歌やないかい! ごっつい厚化粧して苦しそうに歌わんとキャバレー感出ぇへんねん、ほんでごっつい厚化粧して苦しそうに歌わんとアバズレ感も出ぇへんねん、更にごっつい厚化粧して苦しそうに歌わんと男に捨てられた時の説得力が全然ないのよ、さわやかで清楚なお嬢さんなんかに演歌なんか合わへんねん てゆうか、演歌のほうからお断りやからね、女性歌手が厚化粧して苦しそうに歌うんは演歌や!演歌で決まりやがなそんなもん


駒場   俺も演歌や思うてんけどな、オカンがゆうにはな、お洒落なカフェでようかかってるゆうねんな


内海
   ほな演歌ちゃうやないか! お洒落なカフェで演歌なんかかかっていいわけ無いもんね、お洒落なカフェでかかっていいんは、ジャズかボサノバ、クラシック、ギリで顔見せなしの葉加瀬太郎とフジ子・ヘミングまでやねん 演歌が大手を振れるんは場末の温泉街のスナック喫茶か一杯飲み屋ぐらいなもんやねん、演歌最高のひのき舞台はキャバレーなんよ、キャバレーがギリやねん、調子に乗って高級クラブに行こうもんならボコボコにされてSPに叩き出されるからね、演歌ってそういうもんやから、そんな演歌がお洒落なカフェなんかでかかってみぃ、ふわふわのパンケーキ、一気にぺしゃんこになって一銭ようしょくみたいになってまうがなそんなもん、 演歌ちゃうがな、 ほなもうちょっとなんかゆうてなかったか?


駒場   演歌歌手1ダースほど集めてな、三千円ほどのチケット売って全国ドサまわりしとるらしいねんな


内海   演歌やないか! もう演歌歌手ゆうてもうてるやんか! しかもな、そのへんのスーパー行ったらそのチケットのさらに半額割引券、山のように積んどるからね、弱小プロレス団体の半額割引チケットと並んでおいてんねん、 しかし演歌歌手1ダースで入場料千五百円て、どんだけやねん。 儲かるわけないがなそんなもん、でも俺はねぇ、二、三人の名の知れた歌手だけにギャラを払って、残りの金魚の糞みたいについて来とるバーターの歌手たちは一銭もギャラは貰えてないと踏んでんのよ。 そんなもんなのよ演歌の世界なんちゅうもんは、コンプライアンスに反しまくってんねん、反社会勢力とほとんどかわらんのやから演歌の世界は、 ファンは騙せても、この俺の目は騙されへんよ、俺騙したら大したもんや、 今時そんなインチキなドサまわりさせるんは演歌しかないねん、演歌で決まりやそんなもん!


駒場
   わからへんねん、でも


内海   何がわからへんのこれで


駒場   俺も演歌と思うてんけどな


内海   そうやろ


駒場   でもオカンがゆうにはな、むちゃくちゃ難しい曲が多くてな、すぐには覚えられへんらしいねん


内海   ほな演歌ちゃうやないか! すぐ覚えてまうがな演歌なんちゅうもんは、俺なんか新曲でも一回聞いたら完コピできるがな、もっと言えば初めて聞く曲でもワンフレーズ聴いた後、そん次のフレーズ予測できるもんな、新曲やゆうても新曲に聴こえへんのよ、聞き覚えのあるフレーズ適当につなぎ合わせてこぶし回してしつこくビブラートかけて歌っとたらええのや、演歌なんちゅうもんは! これ、ちょっと言い過ぎたかぁ? オカンがわけわからんことゆうからやでぇ、俺が一線超えそうなときはお前が止めてくれんと誰が止めんねん、頼むわぁ、 でも演歌ちゃうがな、ほなもうちょっとなんかゆうてなかったか?


駒場   その音楽やってる歌手は、みんな不幸になるゆうねんな


内海
   もう絶対に演歌やないかい! 演歌の歌手は幸せになったら絶対にあかんからね! 幸せになりそうやったらマネージャーがお金持って逃げよるからね演歌の世界は、男に翻弄され、酒におぼれ、借金抱えて、泣きぬれるんが演歌の世界やから、 間違って幸せになんかなったら、世間は許してもこの俺が許さんからね、 演歌なんてもんはね、恨みつらみ、未練、後悔、懺悔の念、のかたまりなんやから、そんなもんに幸せの光なんか絶対に射せへんからね、こんどは俺が許しても神さんが許すわけないねん‼ 演歌で決まりや、もう演歌以外考えられへんやんそんなもん


駒場   俺も演歌や思うてんけどな、オカンがゆうには、フランス料理でワイン飲みながら聴く音楽にぴったりやゆうねんな


内海   ほな演歌ちゃうやないか! フランス料理店で演歌なんか流そうもんなら、テーブルの上のエスカルゴ、びっくりして生き返るがな、キャビアにいたっては孵化してチョウザメになってもうて、店ん中泳ぎ回ってまうがなそんなもん、フランス料理と演歌の食べ合わせは、鰻と梅干の食べ合わせよりひどいんやからね! 演歌聴くときは、熱めの燗に炙ったイカに決まっとんのよ、あっ、そういえばさっき炙ったイカもろうとったやないか、俺らの漫才見越して炙ったイカくれたんやったら、あのお客さん大したもんやぁ! ただ、さっきからイカ臭くてかなわんのやけどねぇ、やけどこの臭さも含めての演歌やからね、演歌はくさいねん、 そやからフランス料理に演歌なんかありえへんのよ、演歌ちゃうやろ、ほなもうちょっとなんかゆうてなかった?

 
駒場   その音楽の主人公は、泣きながら夜の街を彷徨い歩くゆうねんな


内海   演歌やないか! 演歌の主人公は彷徨い歩くんが大好きなんやから、 悪い男に弄ばれて捨てられて、身も心もボロボロになって褪せたルージュのくちびる噛んで夜霧の街でむせび泣くのが大好きなのよ演歌は! ってゆうか、今時、夜霧の街でむせび泣いとる女の人なんか見たことないけどな…、 しかも、むせび泣くってどうゆう泣き方やねん! とにかく、夜霧の街でむせび泣くんは絶対演歌や!演歌で決まりや!


駒場
   わからへんのや


内海
   わからへんことない! 演歌や!演歌で決まりや!


駒場
   でもオカンがゆうには、演歌やないゆうねん!


内海   ほな演歌やないやないかーーーっ!!! オカンが演歌ではないゆうんやったら演歌ちゃうがな! 先言えよ! 俺が演歌のドサ回りのシステム必死で説明しとるとき、おまえどう思っててん!


駒場   申し訳ない


内海   ほんまにわからへんがな、どうなってんねんそれ、


駒場   でもオトンがゆうにはな、その音楽、パンクロックちゃうかて


内海   いや、絶対ちゃうやろ、 もうええわぁーー


駒場・内海   どうもありがとうございましたーーーーっ。

おしまい

※追記  ミルクボーイの漫才ネタの中に《演歌》を見つけてしまいました。僕が考える程度のもんは、プロはとっくに思いついていたのですね。申し訳ございません! 

しかしながら、ボケは殆ど被ってはいなかったのでミルクボーイ様、どうかお許しを。