デビュー38年、行われたライヴは全国津々浦々、約2,500回。その多幸感溢れるエンターテーメントの完成度はすこぶる高く、『逢いに行っちゃうバンド』のスタンスは未だ変わりません。
35年程前、6畳のアパートでゴロゴロしながら漫画を読んでいた所、テレビからカルピスのCMソングが流れてきます。その瞬間、曲の素晴らしさもさることながら、その唄声のインパクトにやられてしまい、読んでいた漫画を放り投げてレコード屋に駆け込み、『TO YOU -夢伝説-』という ベストアルバム(当時はレコードのLP盤)を早速購入。ベスト盤だけに捨て曲は一曲も無く、A.B面、全てに渡って《スタ☆レビ》の魅力が染込んでおり 、バンド名にレビューを付けている意味がハッキリわかる程のワクワク観でした。
以後、ずっとファンで聴き続けているのですが、その魅力は薄れる事無く今に至っております。
デビュー当初、商業的にはうまくいかず、くすぶっていたのですが、CMソング『夢伝説』のヒットもあって、何とか生き残ります。その後も大ヒットを飛ばす事もなくメジャーな舞台には立てませんでしたが、観客を楽しませる事に全力をかけた凄まじい量のライヴ活動で固定のファンを作り、日本の代表的なライヴロックバンドとして定着します。
一番の魅力は、なんと言ってもボーカル根本要の唄声!
その声量と音域。少しかすれたハスキーボイスと星空に響き渡る程の声の広がりは、まるで映画を見ているかの様な、美しい映像が浮かぶのです。そのスケール感は、オペラ歌手やミュージカル歌手にも匹敵する程!それに楽曲のすばらしさとメンバーによる抜群のコーラスが加わると、《スタ☆レビ》ならではの説得力が生まれます。
ライヴ全体の構成力も素晴らしく、アップテンポの曲とバラード曲の緩急も絶妙です。
そしてライヴの大半を占める根本要のMC。
へたな芸人なんか吹っ飛ばすほどのトーク力で、メンバー、観客一体となったライヴ感は忘れがたく、一度ハマったファンのリピート率は大変なものでしょう。またライヴ中、根本要の歌詞の間違いやド忘れは頻繁で、もはや名物(このハプニングを自虐ネタとし笑いに転換するトーク力は、一つの芸として完成の域に達している)となっています。
言い方は悪いのですが、もしボーカル根本要が超イケメンで抜群のスタイルであったなら、一時期は爆発的に売れたでしょうが、人気の浮き沈みは激しかったでしょう。
結果的にその風貌が、オノヨーコや尾木ママにそっくりだったおかげでネタにもできたし、女の子にもそこまでワーキャー言われなかったため、今迄長くバンドが存続出来たのでしょう。
また、自分たちは演奏が下手なので、バンドのモットーは《常に練習》だそう。人の二倍も三倍も練習するそうです。適当にやっていると見せかけて、いやぁーっ、頭が下がります。
映画でも演劇でもそうなのですが、慕情や郷愁のスパイスとしての笑い。また笑いをより効果的する為の底に流れる哀愁。これを絶妙なバランスで構成し提供する事によって観客は、大変な感情移入をしてしまいます。
根本要のくだらないおしゃべりで笑わせた後に、完成度の高い《追憶》なんか歌われた日にゃ、そりゃ涙もするし感動もしますわっ!(さだまさしも同様の手口)
《スタ☆レビ》のバラードは名曲ぞろいで、僕の一番好きな曲で《トワイライト・アヴェニュー》があります。
ファン投票でもおそらく一位だったと記憶しているのですが、このラヴソング、何でこんなに心に響くのでしょうか?
シャイで、キラッキラの感受性を保っていた10代、恋の炎が初めて自身の胸に灯ったのだけど、その気持ちを相手に伝える勇気も自信も無く、時だけが過ぎて行く。その溢れ出る気持ちを誰にも打ち明けられずに、ブルーに染まった夕闇の街の通り道を一人彷徨う。
片思いの恋、告白できぬ恋、プラ トニックな恋、そんな現実と妄想の入り混じった恋愛を誰もが少なからず経験しているもの。 その慕情はいくつになっても人は持ち続けます。その慕情にぴったりシンクロするラヴソングが《トワイライト・アヴェニュー》だったのでしょう。
女性目線で描かれているであろう歌詞なのですが、男性目線でも十分重なりますし、一番が男性、二番が女性の心理描写と捉えるのも面白い見方なのかもしれません。
ともあれ、この歌はメロディーも秀逸で、根本要の広がりのある声で歌われると、小さな小さな恋愛の歌が宇宙にまで広がり、人の無意識の領域に迄、染込む普遍性を持つのです(ちょっと大げさ?)。
もう、涙なくしては聴けませんっ! ただひたすらに君が好き…。
楽曲は名曲ぞろいで、数えきれませんが僕の好みでざっと上げときます。
《シュガーはお年頃》
《ブラックペッパーのたっぷりきいた私の作ったオニオンスライス》
《トワイライト・アヴェニュー》
《夢伝説》
《今夜だけきっと》
《追憶》
《もう一度抱きしめて》
《木蘭の涙》
《クレージー・ラブ》
《潮騒静夜》
《めぐり逢えてよかった》
《ふたり》
あと、アカペラも大変美しく、3枚のアルバムがリリースされています。
《CHARMING》
《DEVOTION》
《ALWAYS》
オノヨーコは認知症になってしまったけれど、《スタ☆レビ》のオノヨーコはいつまでもお元気で、声の続く限り歌い続けて、僕たちを銀河の宇宙へ連れて行って下さい。