宇宙を一つのつながりとみなし、それぞれのおこないは互いに強く影響し合う。だからこそ、虫・魚、鳥・獣、草木、そして人間はすべて平等で、共栄共存こそが、遍く一切を救う唯一の道である事を『アイヌの言霊』は教えてくれます。
先日、NHK『ETV特集「今よみがえるアイヌの言霊〜100枚のレコードに込められた思い〜」』を視聴しました。
ネイティブ・ジャパニーズの縄文人に類似点の多い、北海道の『アイヌ民』や沖縄の『琉球民』の風俗に、縄文人の文化や宗教観が色濃く残っており、今回の放送は、非常に興味深いものでした。
『アイヌ民族』は文字を持たず、すべての文化は代々口伝(言霊)であったそうです。今回、壮大な叙事詩『ユーカラ』の語り部、金成マツさんの肉声を含めた、約100枚ものレコードが最新の復元技術で蘇りました。 アイヌ語で語られる、その歌や物語りは、言葉の意味を越えた様々な情報を含蓄している様に思え、アイヌの先人は文字では伝え得ない事を理解していたからこそ、あえて口伝の方法を取り続けたのでしょう。
アイヌ叙事詩『ユーカラ』は「人間のユーカラ」(英雄叙事詩)と「カムイユーカラ」(神謡)の二種類に分けられ、その長さは、三日三晩かかっても語り尽くせぬほど壮大な物語だったそうです。
縄文人と同じく、狩猟民族であったアイヌ民族は、江戸時代より大和民による様々な迫害をうけ、遂には明治政府の制定し た『北海道旧土人保護法』という、とんでもない法律により、アイヌの土地を没収し、漁業・狩猟を禁止し、不慣れな稲作を強制し、あげくの果ては日本語教育の同化政策によって、アイヌの文化や言葉を禁じ、その高尚な精神文化に壊滅的損害を与えます。
戦前戦中、韓国、中国、台湾、東南アジアの国々に対して行った日本政府の植民地政策とまったく同じ事を、明治時代、アイヌ民族に対しても行っていたのです。
洋の東西を問わず侵略とは、先住民の土地や資源を圧倒的な武力によって強奪し、文明化という名の下に、その風俗や宗教 、そして一番大切な言葉さえも奪ってしまう事。
どのような大義名分をかざしても、明らかな国家的集団強盗殺人であり、 今も中国やロシアが少数民族に対して行っており、アメリカやヨーロッパ諸国の本質である『覇権主義』は、今なお変わっていません。
有史以来、常に強力な軍事力を持った文明人と称する好戦的な民族が、科学的な発展よりもまず、森羅万象とシンクロし、 その幸せを理解し体感した、豊な精神性を持った平和的な民族を何度も何度も、容赦なく絶滅に追い込む事を続けています。
しかし、近年その因果応報のサイクルは加速度を増して短くなり、自業自得の現れは、テロや自然災害の形となって 顕在化しています。
2017年、世界の動乱は益々激しくなり、それぞれの国の民意の総体が、その国の運命を決めるのでしょう。