講談界の活火山講釈師《神田伯山》 YouTube【神田伯山ティービィー】にて、ただいま大噴火中! 今、YouTubeチャンネルは、新局面に突入中なのです!

神田伯山2

今、様々な分野の本物のプロフェッショナル達が、新たにYouTubeに続々参入中! YouTubeチャンネルの新たなる可能性が広がりつつあります。中でも《神田伯山ティービィー》の男前振りは群を抜いております。 その講談を一度でも見てしまえば、病みつきになること間違いなし!!


何の効力もない【緊急事態宣言】が発令され、一億三千万人総引きこもり状態となりつつある令和日本。そもそもが仕事場に籠って作業しているわたくしにとっては何の変化もないのですが、見る番組が何も無くなってしまったテレビに見切りをつけ、暇な時間はもっぱらYouTube三昧。 

格闘家《朝倉未来》のチャンネルを見始め、コラボしている人気ユーチューバーをたくさん知ることとなるのですが、還暦すぎのジジィにとっては、いまいち乗り切れず、そのうち芸人《中田敦彦のYouTube大学》を好んで見るようになり、中でも《サピエンス全史・文明の構造と人類の幸福》という書籍を解説している回は異常に面白く、

「この本、絶対買って読んでみよう!」

と思いつつ、購入しないまま早や四ヵ月。


ここ一年程前から、様々な分野のプロフェッショナル達が、今までのYouTubeでは見られなかった斬新な企画で続々参入してきており、今、YouTube界は、とても面白いことになっておるのです。 

《ジャルジャル公式チャンネル》では、毎日欠かさずネタをアップしており、チャンネル登録者数は66万人を超える人気ぶり。

《東野幸治の幻ラジオ》では、YouTubeであるにもかかわらず、映像なし音声のみの訳のわからないシステムで開設しており、娘D(長女)、その手下(次女)、ラスボス(嫁)達の家族全員を巻き込んだネタを織り交ぜた、なんとも力の抜けた(自宅のリビングで収録)、東野幸治のどうでもいい独語りの、しけたチャンネルなのですが、コアなファン(僕もその一人)の圧倒的な支持を得ているようです。


で、本題。

少し前にブログにあげた《神田伯山》YouTubeチャンネル【神田伯山ティービィー】のお話。


本物の凄み!本物の奥深さ!本物の狂気! 神田伯山の卓越した時代を読むセンス!


今までのYouTubeチャンネルにはありえなかった本物の芸を ご本人自ら惜しげもなく僕達に魅せてくれる男前なチャンネルなのです! 通常、芸人がYouTubeに参入する場合、生粋のユーチューバーをリスペクトしたうえで、YouTubeリスナーの好みを徹底的にリサーチし、満を持してチャンネルを作る(代表的なのがカジサック)のでしょうが、神田伯山はそのすべてを全く無視! YouTubeチャンネルであろうがなかろうが、ド直球の正面突破!今までのYouTubeリスナーなどまったく眼中になく、一ミリたりとも媚びてはいないのです。


しかしながら、今までYouTubeを見ていなかった中高年層のリスナーを新たに開拓。おりしもアイフォンやアイパット等のタブレット端末が中高年層にも広がり、簡単にYouTubeを見ることの出来る環境が整っている昨今、YouTubeは、若者だけでなく爆発的に中高年層のリスナーが増えつつあるのす。

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神田伯山は、三年程前、まだ二ツ目の神田松之丞の時代の高座をラジオで聞き、少し興味を持ちます。既にそのころからチケットのとれない講談師として脚光を浴びており、気にはなっていたのですが寄席に行く機会もないまま時は流れます。

その後一年ほどして始まったラジオ番組が、《神田松之丞 問わず語りの松之丞》。 これがまた全編人の悪口で構成され、方々に喧嘩(プロレス)を売りまくるというクソ番組で、松之丞の所かまわず世間にプロレスを仕掛けるという所業は、まさに講談師の鏡のよう!! プロレスの大好きな僕としては、


「アッパレ、神田松之丞!!」


と、心のなかで大賛辞を送っていたのです。

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で、神田松之丞は今年の2月11日、めでたく真打昇進、6代目神田伯山を襲名するに至ります。襲名披露興行は、新宿末廣亭を皮切りに行われたのですが、この楽屋風景を同じ寄席芸人の若手が撮影し、20分程度に編集したものを流して始まったのが、YouTubeチャンネル【神田伯山ティービィー】だったのです。

普段、僕達が見ることの出来ない師匠連中の雑談や、前座さんたちの楽屋修行の様子などが映し出され、さらに気心の知れた芸人さんが撮影する楽屋風景は、皆普段通りリラックスしており、テレビ撮影では絶対に映し得ない空気感を醸し出しているのです。 

この様子は毎日即時にアップされ、全部で30本近く流されたのですが、僕はこれを見るのが毎日の生甲斐で、すべて鑑賞。 千穐楽の終わった後は【神田伯山ティービィー】ロスとなってしまったほど。

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しかしながら間髪入れずに、翌々日アップされたのが【講談《畔倉重四郎》連続読み・全19席】!!!


一席20分程、19日連続でアップされたこの長編講談は、まさに「圧巻!」の一言 

おそらくYouTubeチャンネルがなければ、これだけの連続読みの講談を聴く機会は、死ぬまで訪れなかったことでしょう。 講談の本当の面白さ、凄さ、深さをこのチャンネルで知ることとなるのです。

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稀代の大悪党・畔倉重四郎。ある出来事をきっかけに悪事に手を染めてしまい、その後、躊躇することなく次々と殺人を重ねたうえ、その罪を他人に被せるという、極悪非道の知能犯となってゆく畔倉重四郎。そして、それを裁くはご存知、南町奉行・大岡越前守

大悪人・畔倉重四郎と、名奉行・大岡越前の丁々発止のやり取りを 僕達は固唾をのんで聞き入ることとなるのです。 神田伯山の魂の講釈、あたかもその現場に居合わせたかのようなその描写は、鮮明な映像を見せてくれ、圧倒的なリアリティーを伴って僕達の脳裏に迫ってまいります。 それは映画やテレビ、小説などではけっして味わえない初めての体験。 物語の脚本も本当によく出来ており、こんな素晴らしいお話が今まで埋もれていたのかと、あらためて伝統芸の底深さに圧倒されてしまったのです。


その続きを聞きたくて待ち遠しい毎日。あっという間の全19席でした。
すべて聴き終えた後は放心状態。次は何かと期待が大きく膨らむ中、アップされたのが一番聞きたかた【中村仲蔵】の一席!

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この【中村仲蔵】は、以前、爆笑問題の事務所の《タイタンライヴ》で披露され、太田光が大絶賛していたもので、本当にタイムリーな映像! 今、観客がなにを求めているかを理解し、それを出し惜しみせずに提供していく手法は、アントニオ猪木、新間営業部長の時代の新日本プロレスの手法そのもの。さすが神田伯山! 攻め時を逃しません。

 
そしてそして、たたみかけるようにアップされたのが、伝説の新作講談【グレーゾーン】の三つのバージョン! まさに観客が望むものの遥か上を行く仕掛けは猪木時代新日本プロレスの真骨頂! 

前座時代の初演、二ツ目の松之丞時代、そして真打披露公演の伯山時代の3席を一挙公開!! どこまでも男前なのであります神田伯山

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このお話は、同志で、今年5月に真打昇進が決まったガチンコ新作落語家《瀧川鯉八》を主役に添えた新作もので、プロレスの《八百長》《真剣勝負》を題材とし、その論争を 落語の世界に置き換えて、主人公《瀧川鯉八》の芸に対する生き様を描いたもの。 

お話前半の学生時代の《瀧川鯉八》のプロレス談義は、プロレスファン歴50年の僕としては泣きたくなるほどに共感を覚えたのです。 

この物語には、大相撲の横綱・千代の富士と、同時代のガチンコ横綱・大乃国
対比、更には、テレビ番組《笑点》の大喜利が、ガチンコか脚本なのかの葛藤など、実存する人物や番組を結果的にディスる内容が散りばめられており、テレビでは流せない極めて危険な内容。 

この、誰もが未だに持ちえない《八百長》《真剣勝負》を測るスケールを見出す旅路の物語は、どなたの人生にも当てはまるはず。


表現者(生きている限り誰もが表現者)の根源的な葛藤、エンターティナーの宿命、自身が探求したいものと、観客が見せてほしいいものとの乖離。嘘と真実の狭間で、リアリティーとファンタジーの狭間で揺れ動く魂。

この世の全ての現象は複雑に絡み合って成り立っています。プロレスに限らずフェイクとリアルの境界線なんてものは存在しません。全き黒も全き白も存在せず、そこに広がるのはグラデーション豊かなグレーゾーン。

生きることとは、そのグレーゾーンの底なし沼でのた打つことなのか……。


笑って泣いて、この物語を最後まで聞き終わったとき、観客は、自身の今までの生きざまに照らし合わせ、もう一度、そのグレーゾーンの荒野で、自分だけの答えを見つける旅を歩み始めるのでしょう。

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令和2年、曇天の桜吹雪の舞う季節に聞いた講談【グレーゾーン】

その解釈は、世界中にウィルスと人々の猜疑心の蔓延する今、何らかのヒントになるのか、ならないのか…。


ちょっと暗く、重たく、理屈っぽい内容になってしまったのですが、こんな理屈はすっ飛ばして、とにかく神田伯山の講談は

面白い!

楽しい!

怖い!

悲しい!

せつない!

凄まじい!

のです。


本当は生の寄席で、ライヴで、神田伯山を聞くことが出来たら、更にその面白さを深く感じれるのでしょう。それが叶う日を夢見て、心だけは明るく楽しくあり続けたいものです。

三席上がっている中で、一番の感動バージョン! 

我ながら素晴らしい出来です。(by伯山)

おしまい